子供の体調を心配する母親の思いが東京まで足を運ばせた。東電・福島第一原発の事故により被曝した子供たちのための健康相談会が23日、港区芝公園で行われた(主催:こども福島情報センター)。
母親と子供たちを福島から招いたのは「アースデー東京タワーボランティアセンター」。母親に手を引かれた子供18人(ゼロ才~8才)が医師の問診を受けた。
母親たちの心配は尋常ではない。事故発生以来、3か月以上経つが、事故収束のメドは立たず、原発からは絶えず放射性物質が撒き散らされているのだから。文科省が校庭の放射線の許容量を20mSv/年としたことも親たちの不安と怒りを掻き立てた。
不安は溜りに溜まっているのだろう。問診は短くて15分、長い母子は40分にも及んだ。
福島市内でも最高レベルの線量が測定される小学校に子供(小3)を通わせる母親に話を聞いた―
「目の下のクマが気になる。先月末に鼻血と下痢があった」。母親は問診前、我が子の体調をこのように話した。
小児科医の問診を受けること、20分あまり。母親は目を赤く腫らしていた。「医師からは『(福島に)戻るな』と言われた。『住み続けると19才までに発ガンする可能性がある。早ければ1年後に発症する』と言うことだった」。
すぐにでも避難したいところだが、この母子には簡単に福島を去れない事情がある。夫(父親)は地方公務員で家のローンが残っているからだ。
家族ぐるみで他県に移り住めば収入はなくなる。夫が福島に残れば、家族は離れ離れになる。「もう絶望的」、母親は肩を落とした。多くの家庭は同様の事情を抱えている。
健康相談会を終えた医師(3人のうち2人)が記者会見を開き、次のように述べた――
黒部信一医師(小児科)「福島の子供たちはハイレベルの放射線を浴びているので、皆避難させたいが、転出先でストレスが溜まると病気になりやすくなる。福島から来た子供は放射能を浴びている、などといわれのない差別を受けることもある」。
山田真医師(小児科)「毎日、不安のなかで生きていくのはストレスが大きい。長期は持たない。不安とストレスのない地で生活した方がよい。子供らしい生活ができた方がいいと(母親たちに)アドバイスした」。
前出の母親は医師の勧めを受け入れることにした――
「夫を残して自分たちだけ逃げるのは心苦しいが、子供を守るために決心した。先生(医師)が背中を押してくれた。住み慣れた福島を離れなければならない。誰を恨めばよいのか」。
原発はひとたび事故が起きれば、夥しい数の人々を不幸のどん底に突き落とす。海江田経産相や政府のお歴々は簡単に「再稼働」を口にするが、被曝者を救うことの方が先ではないのか。子どもの未来を考えない国家に将来はないのである。