「この秋、ムチャクチャやばい法律が通ってしまいそうです…」。街頭で訴えているのは山本太郎議員だ。やばい法律とは15日から始まる秋の臨時国会で安倍内閣が提出する「秘密保全法」のことである。
「この国の権力者たちが“これを秘密にしようぜ”と思うと秘密になる。どんな秘密なのかも教えてくれない。行政の長や大臣が“これ秘密ね”と言ってしまえば、僕たちは知ることができない…」。山本議員は続ける。
秘密保全法の趣旨は「我が国の安全保障に関する事項のうち特に秘匿することが必要であるものについて…漏えいの防止を図る」ことだ。(総務省HP:特定秘密の保護に関する法律案の概要)
法案によれば、秘密事項を指定するのは行政機関の長である。指定されれば、公務員、契約業者、警察職員以外は「秘密事項」を取り扱うことができない。
山本議員が指摘するように「権力者が“これ秘密ね”」としてしまえば、何が秘密なのかも分からないのだ。
秘密を漏えいすれば10年以下の懲役となる。公務員、契約業者、警察官にとっても十分なプレッシャーとなるが、ジャーナリストも縛られる。教唆、不正アクセスも罪に問われるからだ。まっとうな方法で情報を取得しても、教唆、不正アクセスとされてしまうだろう。
山本議員は秘密事項の文書を残さないことにも警戒感を示す―「何が秘密なのかを未来の人が検証できるように文書を残すべきなのに残さない」。
米国では機密指定された公文書は一定期間(数十年間)、非公開となるが、その期間を過ぎると公開される。日米安保条約で霧に覆われていた部分が、明るみに出るのはこのためである。安倍内閣は歴史を軽視、いや無視してまで何をしようというのだろうか。
「生きる権利を守るためにも秘密保全法を絶対に止めなければならない。あなたのために、あなたの大切な人のために」。山本議員は体を折り曲げ渾身の力を込める。
30日の街宣会場だった池袋東口で耳を傾けていた人に感想を聞いた―
「秘密保全法は怖い。何が起きるか分からないから不安。無関心な人が多いが、太郎さんの言葉は分かりやすい」(60代主婦・新宿区)
「このままだと日本は秘密大国になる。太郎さんが語る“知る権利”“生きる権利”は説得力がある。(知る権利、生きる権利は)国民に欠かせない。保守的な愛媛にも来てほしい」。(愛媛県から出張に来ていて通りがかった男性会社員・40代)。
圧倒的な議席を持つ与党の前に野党はどこにいるのか影さえもつかめない。問題だらけの秘密保全法に対して共産党や社民党は大きな声で異を唱えている。だが、個人でしかも自分の選挙区以外の所で街宣しているのは山本議員だけだ。
山本議員は秋の臨時国会が開会する直前の12日まで各地を遊説する。北は北海道から南は沖縄まで全国20都市で秘密保全法の危険性を訴える。