「冤罪は必ず起きる。実務を通じての私の経験だ。権力によって外部から遮断され人格が無視される状態(私はこれを拘禁ノイローゼと呼んでいる)が続くと、取り調べ官に誘導されて虚偽の供述をする」
「私は捜査の中でそれを何度も何度も経験している。大部分が可視化されても起きる」。
上記は死刑廃止をめぐって警察官僚出身の亀井静香・元運輸相が2016年に日本外国特派員協会(FCCJ)で語った言葉である。
亀井氏によれば取り調べの段階で「ん!?この男はやってないな」と分かるのだそうだ。
それでも冤罪はなくならない。警察庁出身のキャリアは赴任先の●●県警在任中にお宮入り(犯人が見つからない事件)を出すと、昇進に差し障るのだ。
検察も確かに酷いが根本原因を作っているのは警察のキャリア制度なのである。
ある検事のボヤキが今でも田中の耳に残っている―
「これでどうやって有罪を取れと言うんだよ? アイツは筋の悪い事件ばかりを持ち込んでくる。(県警の)本部長がウチの検事正と直接交渉するんだよ。それで決まるんだ」。
アイツとはキャリアの県警捜査2課長のことだ。県警本部長もキャリアだ。警察庁と検察庁の力関係は、政治力で勝る警察庁の方が強い。
キャリア組は難しい事件を数多く挙げて、昇進のための実績を作りたいのだ。
地検トップの検事正が、筋悪でも県警から事件を受取ってしまえば、検事は嫌でも引き受けざるを得ない。
繰り返すが県警本部長が頼んだものを検事正は断れないのだ。よほど剛直な検事正でない限り。
地検のナンバー2である次席検事が興味深いことを話していた。
「●●君(検事)と■■君は(有罪にするための)必要な供述をしっかり取ってくる」と。
検察庁回りで廊下を歩いていたら、偶然にも被告(起訴前であれば容疑者)が検事部屋を出てきた。
検事が被告(あるいは容疑者)に追い討ちを掛けるように言った。「オマエ、そこの供述を変えるんじゃないぞ」。
無実であろうがお縄にしたい警察と、起訴した以上有罪を勝ち取らねばならない検察がある限り、冤罪はなくならない。
再審制度が改正されたとしても、第二第三の袴田さんは出てくる。
~終わり~
◇
『田中龍作ジャーナル』は読者が支えるメディアです。
取材費が圧倒的に不足しております。ご支援何とぞお願い申し上げるしだいです。