【木原事件】 全容を知る刑事を突き動かしたのはYouTubeだった

佐藤誠・元警部補。「顔は写さない」が取材条件だった。=28日、紀尾井町 撮影:田中龍作=

 「木原事件」の全容を知る警視庁サツイチ(警視庁捜査一課殺人一係)の佐藤誠・元警部補が、きょう28日、記者会見を開いた。場所は紀尾井町の文藝春秋ビルである。

 佐藤元警部補は27日発売の『週刊文春』に自ら実名で登場し真相を明らかにしていた。

 風俗店勤務の安田種雄さん(享年28)が殺害された事件で、木原官房副長官の妻が事件に深く関与していて、木原氏は権力をかさに捜査を潰そうとしたというのである。

 木原事件は―
 巨魁・鬼頭洪太(モデルは児玉誉士夫とも笹川良一とも云われる)を通して権力の世界を描いた『けものみち』(松本清張)を彷彿とさせる。

 夜の商売で生計を立てていた民子は、寝たきりの夫を七輪の失火に見せかけて焼き殺した。民子は事件後、政官財を牛耳る鬼頭のお邸に情婦となって住み込む。警察が踏み込める場所ではない。

 だが執念深く事件を追っていた警視庁捜査一課の刑事・久恒は、民子が鬼頭邸に身を潜めていることを突き止めた。

 それが鬼頭の逆鱗に触れ、久恒は警察をクビになり、間もなく殺される。

テレビ局はじめ記者クラブメディアがワンサと詰めかけていたが、果たして何社が報道できるのだろうか。=28日、紀尾井町 撮影:田中龍作=

 統一教会問題を取材する鈴木エイト氏が防刃服を着用しているように、権力に不都合な案件を追及すれば、身辺が危うくなる。佐藤元警部補の身の安全が危惧されるところだ。

 にもかかわらず、佐藤警部補は記者会見まで開いた。その動機を次のように語った。

 (7月13日に露木)警察庁長官の会見があって、「事件性はない」と(言った)

 「カチンと来た。被害者がかわいそうだ」「自殺? そんな証拠は存在しない」「断言しますけど、事件性はあり」。

 「事件の記事を知ったのは文春じゃないんです」

 「佐藤章(ジャーナリスト)さんのYouTube配信を見て」

 「佐藤章さんが解説してたんだけど、この記事は警察の資料がないと書けない。あまりにもめくれ過ぎてる」

 「びっくりしたのは、本当に現職警察官がそんなことを言ったのかと」

 「横田由美子(ジャーナリスト・YouTubeで発信)さん、すごいよく知ってるな」

 「俺ももう後に退けないな」

 木原事件の全容を知るサツイチ刑事をして、記者会見まで開かせたのは、権力に阿(おもね)る新聞テレビではなかった。

 ジャーナリストとして取材の基礎を積んだYouTuberたちの発信だったのである。

記者会見場となった文藝春秋社ギャラリー。木原官房副長官の胸中やいかに。=28日、紀尾井町 撮影:田中龍作=

  ~終わり~

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