年末年始が明けると外苑の森に重機の音が響き始めた。昨日(5日)までは野鳥のさえずりとその姿が確認されていたのだが。
ここだけは触ってはいけないと言われていた建国記念文庫の森の前では、ユンボがせわしなく動いていた。古木巨木が鬱蒼と生い茂る森は、真夏でも冷気が立ち込め、冷蔵庫の中にいるようだった。森には昨晩秋、チェーンソーが入った。
神宮球場も秩父宮ラグビー場も補修すれば、立派に使えるのにもかかわらず、大規模化、高層化して建て直す。
100年の森は、開発業者と一部の政治家の利権のために無残にも破壊されるのである。
日比谷の交差点を渡ると間もなく野鳥のさえずりが耳に飛び込んできた。騒々しいほどである。
神宮外苑が100年の森であるなら日比谷公園は120年の森である。
心字池では野鳥愛好家が水鳥たちをカメラに収めていた。東京のド真ん中に武蔵野の原生林が残っているのだ。毎度のことではあるが来るたびに驚く。
いま日比谷公園の自然が再開発に脅かされている。日比谷通りをはさんでミッドタウン側からデッキ(橋)が架かるのだが、心字池からわずか(西に約10m)にしか離れていない場所に着地するのである。そこにはエレベーターも付く。
杭を地中深く打ち込めば地下水の流れが変わる。心字池の水が涸れることも懸念される。
水涸れしなくてもエレベーター付きのデッキ(橋)がすぐ傍にできれば騒々しくなる。前出の野鳥愛好家は「デリケートなカワセミが来なくなるのでないか心配だ」と言って眉間にしわを寄せた。
デッキばかりではない。公園の再開発に伴って古木巨木が大量に伐採されることも、東京都公園事務所への取材で明らかになっている。
自然を蔑ろにすれば、シッペ返しは人間に来る。
神宮外苑、日比谷公園とも開発業者は三井不動産である。
~終わり~
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