秋の臨時国会で安倍内閣が提出する秘密保全法の危険性を訴えて全国行脚を続ける山本太郎議員。3日は福島県(福島市、郡山市)を訪れた。
東電、政府、マスコミの情報隠しと情報操作の果てに福島の惨劇は起きた。原発が爆発し人々は逃げ遅れたのである。福島は秘密保全法ができたら再び惨禍に見舞われる恐れさえある。山本議員はいつにもまして危機感を露わにした―
「メルトダウンを国は隠していた。メルトダウンを指摘したのは心あるジャーナリスト、心ある専門家じゃないですか。“パニックにならないように、公共の秩序を乱さないように”と言って。人の命を守るより、そういうこと(情報隠し)が行われている」。
「国民の命を守るために国民の血税で作られたSPEEDIの予測が、事故の3日後、アメリカに知らされた。米軍は被曝するから危ないと言って逃げた。自国民には知らされなかった。やっと知ったのは3月22日。福島みずほさん(社民党党首・当時)が追及したからですよ。国は不都合なことにはフタをするんですよ。
秘密保全法が通ってしまったら、それに拍車がかかるんです。そんな世の中にしてどうするんですか?」
福島駅前で行われた山本議員の街宣をボランティアとして支えたのは、毎週金曜日、脱原発集会をここで開いている地元の有志たちだ。「孫が被曝している。円形脱毛症になりながら原発を止めるために頑張ってくれている太郎さんを応援しなくちゃ」。ある女性ボランティア(60代・福島市)は、まめまめしく動く。
「秘密保全法の危険性を市民に直接具体的に話すのは新鮮。(権力が)一番先に秘密にしたいのは原発だろう。公務員に内部告発させないための法律だ。太郎さんはマスクもしないで演説してくれた。私たちのために有難い」。足を止めて耳を傾けていた男性(団体職員・50代男性)は、頼もしそうに山本議員を見やった。
「福島は切り捨てられたと言われているが、日本(国民)全体が切り捨てられた。TPP、原発…すべての元となる情報が遮断されてしまったら、意思表明することも難しくなる。情報開示請求で“黒塗りしか出てこなかった”と言われるが、今度は黒塗りさえ出てこなくなる」。演説台代わりのビールケースに上がる前、山本議員は筆者に話した。
昨年6月、原子力基本法に「原子力は我が国の安全保障に資する」との一文が書き加えられた。秘密保全法もまた「我が国の安全保障に関する事項のうち秘匿が必要であるもの」が対象になっている。
「原発は秘密指定される」。山本議員は口癖のように言う。