ロシア軍によるウクライナ侵攻がきっかけで、平和と反権力で志を同じくしてきた友人たちと袂を分かつことになった。もちろん本意ではない。あまりに残念である。
「ネオナチ説」「自作自演説」に染まり、親プーチンに転じた友人たちにしてみれば、ロシア軍の蛮行を告発する田中に反感を抱くのは当然である。
ロシアの軍事会社ワグネルのドキュメンタリー番組を制作した仏TV局の調査によると、ロシアには陰謀論専門のサイトが147もある。
アメリカに不信感を抱く層ほど陰謀論に はまり やすい。利にさといメディアは陰謀論サイトを日本語に翻訳して反米意識の強い読者を惹きつけてきた。
ところがネタ元があまりにお粗末なのだ。一例を挙げると―
4月中旬にウクライナに着いたフランス人のアドリアン・ボケ氏がブチャを訪れウクライナ軍による自作自演を見た、というのだ。荒唐無稽である。
4月1日にはロシア軍が撤退、間もなく世界中のメディアがブチャに入り、虐殺の跡を確認しているのだ。私は6日にマスグレイブを自らの手で堀った神父に話を聞いた。神父の説明は詳細にわたり住民たちの話と符合する。その後も続々と各国からジャーナリストたちが訪れた。
13日にはICC(国際刑事裁判所)の捜査チームがマスグレイブを視察した。
世界中のジャーナリストとICCが監視する中、どうやったらウクライナ軍がマスグレイブを創作できるのだろうか。ボケ氏の説は幻想としか言いようがない。
現場を一ミリでも見ていれば、ボケ氏のサイトを翻訳したりしないはずだ。「ネオナチ説」「ウクライナの自作自演」を流す人、信じる人に共通するのは、現場に一度たりとも足を踏み入れていないことだ。
しっかりした戦争報道が日本に確立されていれば、こんなことにはならなかった。自責の念に駆られて仕方がない。
~終わり~