れいわが大きくなるために必要な男の戦いぶりをこの目で見届けたい。田中は湖国まで足を延ばした。
高井たかし(れいわ公認・前)。昨年4月、緊急事態宣言下に風俗店に行ったことが発覚し、立憲民主党を除名された。その後、れいわの山本太郎から「失敗は誰でもある、やり直してみないか」と声を掛けられた。
高井がれいわの滋賀3区から立候補することを知った時、田中は膝を打った。期待からである。れいわに欠けているものが得られる、と。
総務官僚を経て、3期10年衆院議員を務めた。提出した議員立法は119本。質疑時間98時間は国会議員中第一位だ。能力の高さもさることながら、霞ヶ関や国会の事情に明るい。最大野党にして鵺(ヌエ)のような立憲の内情を知っていることも強みだ。
田中は1年前、れいわが大西恒樹氏による「命の選別発言」で躓いた時、山本に「幹事長を置くべき」と進言した。山本太郎は全能の神ではないのだ。一人で政策立案から全国遊説から組織の維持管理までできるわけがない。どの政党でも党首の片腕として、幹事長、政調会長を置く。
山本に期待するがゆえ建設的な批判をする人士が口々に言う。「れいわにはナンバー2が必要なんだ」と。まったく同感だ。元祖・新撰組は副長の土方歳三あってこそ組織を維持できたのである。高井であれば、党のナンバー2である幹事長が務まる。
だが選挙情勢は楽観を許さない。
南草津駅前での街宣後、田中は山本と高井を直撃した。
田中は「選挙が不運な結果となっても非議員の幹事長というのもある。高井さんを非議員の幹事長に登用する気持ちはあるか?」と質問した。
山本は、非議員の場合財政上の問題もあるとしながらも、「高井さんは幹事長としての能力が充分にある」と期待を寄せた。
高井は「山本代表の言葉は嬉しいが、まずは選挙で当選すること」と答えた。官僚出身者らしく堅実だった。
今回の選挙では維新の大躍進が予想されている。維新に対抗できるのは れいわ だけだ。大阪都構想の住民投票で実証済みである。
だが幹事長を欠いては、今後、大勢力となる維新と互角に戦うのは困難となる。
(文中敬称略)
~終わり~