
イスラエル軍の空爆で即死した少女。=ガザ 撮影:田中龍作=
少女の頭からはピンク色の脳漿(のうしょう)が飛び出していた。少女がハマスの戦闘員であろうはずがない。これが無差別爆撃だ。残虐という他に言葉がない。
「イスラエルはどうして私たちの子どもを殺すのか」。鮮血に染まった小さな遺体を抱きかかえたパレスチナ男性は叫んだ。
ガザ空爆よりも80年以上も前にあったのが、ドイツ空軍によるゲルニカ爆撃(1937年)だ。スペイン内戦下で起きた史上初の無差別爆撃とされている。

ゲルニカを見学する児童たち。=ソフィア王妃芸術センター 撮影:田中龍作=
人民戦線を応援していたパブロ・ピカソは激怒し、ゲルニカの惨状を描いた。横7.8m、縦3.5m の大カンバスに全身全霊を叩きつけた。地名がそのまま作品名となった。
無差別爆撃の阿鼻叫喚は、時代が変わっても国が変わっても同じだ。
母親は殺された我が子を抱いて泣き叫ぶ。馬は恐怖でいななく。イスラエル軍のミサイルが降り注ぐガザで聞いたドンキー(ロバ)の鳴き声が、今も田中の耳にこびり付いている。

イスラエル軍の爆撃で父親を失った少女。母親は泣き崩れそうになるのを懸命にこらえていた。田中は「神はいないのか」と叫びたくなった。=ガザ 撮影:田中龍作=
ゲルニカを無差別空爆したナチスドイツは、ユダヤ人のホロコーストに邁進した。
民族を根絶やしにされかけたユダヤ人は今、ガザでパレスチナ人皆殺しに突き進む。
いまイスラエルがガザで想像を絶する残虐非道を繰り広げているが、悪魔でもここまですまい。
イスラエル軍はガザの地からパレスチナ人を完全消滅する勢いで無差別爆撃を続けている。

ゲルニカ。死んだ我が子を抱いて泣き叫ぶ母親。=ソフィア王妃芸術センター 撮影:田中龍作=
スペイン内戦は、ヘミングウェイが、オーウェルが、キャパが従軍取材し、戦争の悲惨を訴える名作を残した。
世界のジャーナリストや作家がガザに入域できたら、ピカソでさえ描けないほどの地獄絵を活写するだろう。
~終わり~
【読者の皆様】
世界の不条理はいずれ日本の不条理となります。いや、すでになりつつあります。田中龍作は生ある限り警鐘を鳴らし続けるつもりです。