自民党総裁選の投票に先立つこと1時間前、菅候補の決起集会が開かれていた。場所は総裁選の投開票があるのと同じ都内のホテルだ。
麻生太郎、竹下亘、石原伸晃ら派閥の長が「これでもか」というほど菅を褒めちぎった。
ある領袖は「自分の選挙区では党員投票で2位の候補にダブルスコアをつけた」と自画自賛した。組閣の際の論功行賞をアピールする狙いからだ。党内は安倍以上の一強体制となるのだろうか。
番記者たち40~50人がゾロゾロと金魚のフンのごとく付いて歩いた。安倍番が菅番になっただけだが、総務大臣経験者でテレビ局の締め付け方を心得ている。
議員会館の議員専用エレベーターに菅と一緒に乗ったことがあるが、目つきの暗さ、鋭さが印象に残っている。
決起集会の後、行われた投票の結果、菅377票、岸田89票、石破68票。圧倒的大差で菅が新総裁に選出された。
誰もが結果を予想し得た出来レースだったが、地方票がわずか10票しかなかった岸田に議員票が30票も上積みされた。
石破を2位にさせないために菅陣営から票が回された、との情報が駆け巡った。
石破は「(党内環境が)厳しい中でこれだけの票がよく出た」と仲間をねぎらった。
国民が石破を支持すればするほど派閥の長老たちは石破を潰しにかかる。この点について田中が質問すると、石破は「国民が選挙で審判を下すだろう。その時に変わるのが自民党だ」と答えた。
次の焦点は総選挙だが、年内の場合10月25日投開票という説と、12月にズレ込むという説がある。
早期解散説の根拠は、高い支持率もさることながら、スキャンダルだ。次から次へと醜聞が出、支持率が低くなって総選挙を迎えるよりも、早めに選挙を済ましてしまった方が得策だ、との見方がある。
一方、12月説の根拠としては—
持続化給付金がまだまだ行き渡っていないため、地方の支部がとてもじゃないが選挙を戦えない、というのがある。
近所で評判だった安くてうまい洋食屋が、先週末ひっそりと店を閉じていた。40年もの間持ちこたえていた店も力尽きた。
経済がこんな状態で菅政権が早期解散したら、どんな結果が出るだろうか。党内事情で簡単に転がり込んできた政権に難局を任せることはできない。(文中敬称略)
~終わり~
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