「みんなハッピーになるようになってるんだよ」。17日、安倍首相が新国立競技場の建設計画をゼロベースから見直すと発表した直後、森元首相と長年付き合いのある人物が言い放った。
「みんなハッピーになる」とは、2,000億をわずかにしか割らないという意味である。総工費が大きく減額されると政治家へのキックバックも減るが、そうはならないということだ。
「複数の政府関係者によると総工費1,800億円程度を目指す」とする新聞報道(東京新聞17日夕刊)とも符合する。
工費が高額になる理由は、前稿『森喜朗古墳 2,520億円のたくらみ』で指摘したように、「屋根付き」にするからである。
言い方を変えれば、利権に巣食う人々は新国立競技場の工費を高額にしなければならない。
文科大臣補佐官の鈴木寛氏は、工費が膨れ上がり、反対世論が高まってもなお「屋根付きにすべし」とネット上で説き続けていた。屋根付きにこだわる理由を「コンサートのため」と説明している。
鈴木氏は民主党参院議員時代、文科副大臣にしてスポーツ議員連盟幹事長。「(文科副大臣として)新国立競技場の建設を決断した」と自らのHPで豪語している。2013年の参院選で落選後、民主党を離党し文科大臣補佐官となった。新国立競技場建設に関する下村文科大臣のブレーンだ。
ラグビーW杯の開催を見送ったことにより天然芝にこだわる必要がなくなった。コンサートの回数を増やせる。屋根の必要性をさらに強調できるようになったのである。
国立競技場将来構想有識者会議で文化グループ座長の都倉俊一氏(作曲家)に「コンサートを年50回もやれば、建設費を取り戻せる」とでも言わせるのだろうか。
安倍首相は下村博文・文科相に見直しを指示した。ここがキモである。
文科相の有力ブレーンが「屋根は必要」と言い続ける限り、工費を大幅に抑えることは不可能だ。こうなることを見越したうえで下村文科相に差し戻したともとれる。
デザインの見直しを当初から訴え続けている建築家の槇文彦氏は「屋根付きの有蓋施設が諸悪の根源だ」と指摘する(日経アーキテクチュア2014年7月10日号)。
それでも誰も止められない。「森喜朗古墳」はやはり有蓋(有害)なのである。
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