神宮外苑の伐採問題はユネスコの諮問機関であるICOMOSが警告を発したが、絶望的なまでに緑の破壊が懸念される日比谷公園のリニューアルは影に隠れがちだ。
東京都議会のある野党議員が、きょう3日、日比谷公園を視察した。蓮舫都政が誕生すれば知事与党の議員となる人物だ。
案内したのは東京都公園緑地部のOBで日本庭園協会の高橋康夫相談役。高橋氏は宮崎駿作品に出てくる「トトロの森」のモデルとなった八国山緑地の設計者でもある。
高橋氏は議員とともに日比谷公園を歩きながら、100億円以上の巨費を投じて120年の森を破壊することの罪深さを説いた。
まず夥しい数の古木巨木が伐採されることだ。それも三井不動産のために。伐採というと都民の反発を食らうので東京都は移植と言い換える。
東京ミッドタウン日比谷のビルなどから公園に向けてデッキ(橋)が伸びるのだが、着地点の高木が伐採(都は移植と呼ぶ)される。
日比谷通り沿いのデッキ工事を優先するため、東京都は祝田通りから公園内の大改装工事の資機材を搬入することになる。祝田通りから公園の中心部に向かうルートは樹木の密度が最も高いエリアだ。
幹の直径が60~70センチから1メートル前後もある巨木がびっしりと林立する。原生林の趣さえある。このエリアに資機材を積んだトラックの搬入道路を作る、というのだ。
気が遠くなるほどの数の樹々を伐採(都は移植と呼ぶ)することになるだろう。
東京都が日比谷公園のグランドデザインを公表したのが2018年12月。ところがこの年の2月には、ミッドタウンビルのデッキの接続部が出来上がっていることが確認されているのだ。
日比谷公園の大改修工事はミッドタウンビルありきだったのである。
日本きっての庭園のスぺシャリストから案内を受けた議員は次のように感想を述べた―
「この国は(デベロッパーに)乗っ取られている。住民が知らない所で開発がこっそりやられている。神宮外苑ばかりじゃないんだな」。
2日に投開票があった港区区長選挙で、外苑の伐採に反対する新人候補が当選した。外苑の港区道沿いのイチョウ並木を伐採するには区長の許可が要る。
日比谷公園は都立公園である。緑を守る新知事が誕生すれば伐採は止まる。
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