「なんだかだ言っても小池が勝つね」「小池が250万票で、蓮舫が200万票ぐらいかな」。選挙通による票読みだ。ベテランはたいがい小池の勝利を予想する。
ただし、彼らが判断材料にしているのはあくまでも基礎票だ。ここ数年の国政選挙や都議会選挙で各党が得た数字を積み足すのである。
小池は自民+公明+都ファなどで、蓮舫は立憲+共産+れいわなどだ。
選挙通はプロであるがゆえに政党、業界、労組などからの情報に偏りがちだ。
彼らの票読みは無党派層の動向を勘案しているが、庶民の肌感覚に疎い。触れば「ジュッ」と音がするほど無党派層が怒っていることを知らない。
前回(2009年)の政権交代前夜を思い出す。集金カバンを手にした男性は「今度ばかりは自民党に入れない(投票しない)」と言って奥歯を噛み締めた。年金未納問題で人々の怒りは心頭に発していたのである。
古くは1989年の参院選だ。前年に日米貿易交渉で牛肉オレンジの輸入自由化を決めた自民党政権は、農家の猛反発を食らって大敗。
田中は四国のみかん山を歩いたが、農民たちの口をついて出てくる言葉は「自民党にお灸をすえる」だった。本来の自民党支持層が離反した時、自民党は大敗する。
「山が動いた」。社会党党首の土井たか子の名言が飛び出した選挙だった。消費税施行とリクルート事件も大きく影響した。
今回はこんなものではない。庶民の怒りは過去に自民党が大敗した時の比ではないのだ。
去る4月28日に投開票のあった島根県知事選挙では、自民党支持層が野党候補に投票した。
国民には1円に至るまで課税するのに、自民党であれば何億円でも脱税できる。
足元では食べて行けなくなった人々が炊き出しに長蛇の列を作っているのに、都庁の壁面には巨費を投じて夜な夜な悪趣味な映像が投射される。
7月7日の投票日、従来の自民党支持層と無党派層の怒りは、雪崩を打って「反小池票」となるだろう。(文中敬称略)
~終わり~
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