アゼルバイジャンが、仇敵アルメニアのナゴルノ・カラバフ地域を事実上軍事封鎖して1か月以上が経つ(1月15日現在)。
食料や医薬品が極端に不足し、住民12万人が人道危機にさらされている。生鮮食料品はもちろんパンもないため、人々はスパゲティーで飢えを凌いでいるという。
アルメニア人住民を外に出さないようにしているのも深刻だ。容態が悪化し首都エレバンでの治療が必要とされながら、ナゴルノ・カラバフから外に出ることをアゼルバイジャンが許可しなかったため、命を落としたケースもある。
新生児も必要な栄養や医療措置を得ることができない。
電気、ガスを切られ、電話もインターネットもつながらなくなる。地元のエンジニアが復旧させてもまた切られる。前回(2020年)の戦争の際、ナゴルノ・カラバフで田中も同じ経験をした。アゼルバイジャンの工作としか考えようがなかった。
田中は地元ジャーナリストと共に封鎖現場を目指した。アゼルバイジャンの封鎖現場から70㎞も手前にアルメニアのチェックポイントがあった。軍と警察が管理していた。
緊急支援物資を積んだ国際赤十字の4輪駆動車5~6台が通行許可を待っていた。アルメニア側のチェックポイントを通過できても、アゼルバイジャンの封鎖をかいくぐるのは容易ではない。地元ジャーナリストによれば、半分以上が通過を認めてもらえないそうだ。
アゼルバイジャンの遣り口はイスラエルよりも悪質である。天井のない刑務所といわれるパレスチナ自治区ガザは封鎖されているとはいえ、最南端の検問所ケレームシャロームから荷物を満載した大型トラックがほぼ毎日入ってくる。
ハマスとの間で激しい戦闘が続いていても、イスラエルはネットや電話回線を切らない。繋いでおいて情報を傍受するのである。
ナゴルノ・カラバフの外に出たまま帰れなくなったケースもある。エレバンであった教育イベントに参加した生徒約100人が帰ろうとしたところ封鎖されていたのである。
生徒たちは麓の町ゴリスのホテルで、いつ解けるとも分からない封鎖の解除を待つ。
14歳の女子生徒に話を聞いた。「ナゴルノ・カラバフの自宅には父母と兄弟がいる。会えないのがつらい」と話す。
スマホのビデオ会話機能で家族と話していても途中でインターネット接続を切られるそうだ。「アゼルバイジャンからモニターされているみたいで怖い」と顔を曇らせた。
引率の教師は歯噛みしながら語った。「アゼルバイジャンはアルメニア住民を出て行かせようとしている」。
~終わり~