菅政権が学術会議の人事に介入した事件は、官僚の忖度の範囲を超えていた。本当の首謀者は誰か。
学術会議(210人)は6年の任期で3年ごとに半数(105人)が変わる。学術会議の会員は、同会議の推薦に基づき首相が任命する。日本学術会議法7条がこれを定める。首相に拒否権はない。
きょう国会内で野党が内閣府からヒアリングした。事件のいきさつが部分的に明らかになった。それはこうだ―
学術会議が105人の推薦名簿を内閣府に提出したのが8月31日。いつもであれば、これで決まりだった。
9月24日、内閣府が任命者名簿を起案したが、この時点で6人が外されていた。
6人は安保法制、辺野古基地建設、共謀罪に反対する人文科学者。政権にとっては不都合な存在だ。
内閣府官僚の一存で学術会議からの推薦リストを蹴ったりできるわけがない。事件を追及している某野党議員は「菅首相らと相談しているはず」と話す。
6人を外し99人となった名簿は、9月28日に決裁された。決裁権者は菅義偉首相だ。学術会議が出してきた105人のリストが添付されていた。
学術会議71年の歴史始まって以来の出来事だ。
権力の掣肘を受けないはずの学術の人事にまで、官邸は介入してくるようになった。「パンケーキおじさん」などとマスコミが持て囃していた裏で、時代は一気に戦前に逆戻りしていたのである。
~終わり~