番記者制度という災厄 フリーに開放したところで…

番記者さんたちは野党幹部の言説を黙々とタイプに打ち込んでいた。=昨年12月26日、衆院16控室 撮影:田中龍作=

 権力にとって不都合な特定の記者を、番記者たちが官邸とグルになって質問させまいとする。ネット上で騒然となった。

 首相、官房長官、大臣…権力者が朝起きてから夜寝るまで金魚のフンのごとく付いて歩くのが番記者だ。もちろん定期、不定期のお食事会もある。

 常時、権力者と行動を共にしながら情報を投げ与えてもらう。ただしオフレコなので情報が表に出ることはない。

 国民に報せなければならない情報であることも少なからずある。それでもお仲間から外されると情報を投げ与えてもらえなくなる。
 
 マスコミの記者たちが最も恐れるのが特オチ(1社だけリークから外される)だ。特オチが続くと左遷される。出世の目はほぼ完全につぶれる。

 番記者さんたちが記者会見でキワドイ質問ができるわけないのだ。

番記者の総本山である国会記者会館。彼らが権力と一体化していることを揶揄し抗議するプラカード。=2017年2月、永田町 撮影:田中龍作=

 フリーランスは現在のところ、野党幹部や一部大臣の記者会見に出席できる。

 下級国民のフリーが上級国民の番記者さんたちと同席するのである。

 フリーは嫌味な質問をぶつける。政治の現場を知り尽くした古強者が質問すると、野党幹部が顔をひきつらせたりする。

 田中は立憲を追及することが無意味に思えて、しばらく質問を差し控えていた。すると古強者から携帯に電話が掛かってきた。

 「アンタが質問しないと記者会見が静かで面白くないじゃないか!」とお叱りを頂戴した。

 番記者さんたちは羊のように大人しい。質問はするが、権力者の嫌がることは聞かない。野党幹部に対しても、である。

 結果、与野党ともに記者から追及されることはなくなる。わずか2~3人のフリーが頑張ったところで焼け石に水なのである。

 記者会見をフリーランスに開放しても、番記者制度がある限り、記者会見は権力追及の場とはならない。記者クラブの象徴である番記者制度は国民にとって災厄である。

    ~終わり~

     ◇
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