人質事件は最悪の展開となった。後藤さんの死を悼み、今回の事件を呼び込んだ安倍首相に抗議する人々がきょう午後、官邸前に集まった。
「救えた命を救わなかった」「後藤さん、湯川さんを殺害したテロリストに手を貸したのは安倍だ」・・・官邸前は安倍首相の姿勢を糾弾するプラカードで一杯になった。
「I’ m Not Abe」と書いた手製プラカードを掲げ、腕に黒い喪章を巻いているのは、茨城県から駆けつけた男性(会社員・50歳)だ。
「わざわざ外に出て敵を作るのは間違いだ。2人の人命以上に日本が敵視される国になった。くやしい。イスラム国より安倍さんに対する非難の方が大きい。私は誰の敵でもない」。男性は語調を強めた。
港区に住む自営業の女性(64歳)は「在外邦人を危険にさらす安倍首相は辞任せよ」のプラカードを手に参加した。
「マスコミの論調は一色になっている。(憲法9条、原子力を訴えた)後藤さんのお母さんは正しい。全ての問題が繋がっている。今のマスコミはおかしい。戦争報道を反省したマスコミはどこへ行ったんだ?」女性は真剣な表情で訴えた。
~政界とマスコミは早くも翼賛体制~
「断固として卑劣なテロと戦う・・・」。イスラム国が後藤さんを殺害した動画がインターネット上にアップされるのを待ちかねていたかのように、安倍首相は「テロとの戦い」を宣言した。
2001年9月11日、ニューヨークが攻撃を受けるとすぐにテロとの戦いを宣言したブッシュ政権は空前の支持率を得た。
記者団を前に「テロと戦う」と奥歯を噛みしめながら決意表明する安倍首相の姿は、ブッシュ大統領と重なる。
当時の米国以上の早さで、日本は翼賛体制が出来上がりつつある。
けさのNHK日曜討論では共産党の山下書記局長までが「残虐かつ非道な手段による憎むべき蛮行であり断固糾弾したい」と述べ、安倍首相の唱える「テロ非難」に同調した。
テレビニュースも安倍首相が目論む「テロとの戦い」のお先棒を担いだ。
テレビ局(NHK※、TBS、フジ、日テレ、テレ朝~1日正午現在)は、後藤さんの母親が出した声明のうち「憎悪の連鎖にしてはいけない」の 部分をカットして放送した。安倍首相の言う「罪を償わせる」を忖度しての対応と見られる。
イスラム国は殺害ビデオを通じて「日本にとっての悪夢を始めよう」と警告した。
安倍政権が事件を奇貨として有志連合に参加するようなことになれば、悪夢は現実のものとなるだろう。
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NHKはweb上のニュース原稿では「報復の連鎖…」を載せているが、テレビのオンエア画面ではカットされていた。