
中国政府の弾圧により廃刊に追い込まれた『りんご日報』の最終版(2021年6月24日)。=撮影:香港の友人黎氏=
言論の自由なんて政治体制が変わればいとも簡単に潰される…あまりにも端的に示した判決だった。
香港民主勢力のシンボルだった『りんご日報』の創業者で国家安全維持法違反の罪に問われていたジミーライ(黎 智英)氏に、香港高等法院は15日、有罪判決を言い渡した。
「外国勢力と結託して国家の安全を脅かした」という。
量刑は後日、言い渡される。無期懲役の可能性もある。

自由な言論を刷り続けた輪転機。=2021年6月17日、りんご日報印刷所=撮影した友人の張氏は返還前に生まれており英国パスポートを持っていたため、香港を脱出し、現在は某国で暮らす=
2019年、中国政府は大量の警察隊を投入して香港の民主派を徹底弾圧した。人民解放軍が香港警察の制服を身にまとって紛れ込んでいたほどだ。
苛烈なデモの現場にいち早く駆け付けていたのが『りんご日報』だった。『りんご日報』の動きを見ていればデモ隊の動きが分かった。民主派からの信用絶大だったのだろう。
「李鵬(首相・1998年~2003年)のバカ野郎」。公然と言い放ったこともあるジミーライ氏だった。
弱冠12才、無一文で大陸から香港に密入港してきたジミーライ氏は、大衆ファッションブランドの量販やメディア事業などで富を築き上げた。香港ドリームを体現したことも中南海にとって目障りだった。

中国国旗を燃やすデモ参加者。高市政権や参政党が進めようとする国旗損壊罪にあたるのだろうか。=2019年、香港 田中龍作=
香港返還にあたってサッチャーと鄧小平の間で交わされた中英共同声明は、「返還(1997年)から向こう50年間、一国二制度を維持する」と謳っている。
香港が中国の一部であるというならば、言論の自由は保証されなければならないのだ。民主主義はもろい。あらためて認識したい。
~終わり~
◇
田中龍作ジャーナルは現場主義です。読者の皆様に世界の現実を伝えるためですが、多額の交通費を必要とします。





