原子力規制庁 原発事故、過小評価のズサンな避難対策

滋賀県の原発事故・防災対策を説明する嘉田知事。=30日、原子力規制庁 写真:筆者=

滋賀県の原発事故・防災対策を説明する嘉田知事。=30日、原子力規制庁 写真:筆者=

 国のズサンで場当たり的な原発事故・避難対策がまたもや明るみに出た。

 滋賀県の嘉田由紀子知事がきょう、原子力規制庁を訪れ、池田克彦長官と面談した。滋賀県は原発銀座の福井県に隣接し、原発から最も近い自治体は13キロしか離れていない。立地自治体ではないが、原発から30キロ圏内に6万人が住む。

 嘉田氏は、現状では住民の避難対策に万全を期せないとして、池田長官を通して国に改善を要望した(以下「 」は嘉田知事の発言―

 「(シビアアクシデントが発生した場合)自家用車で避難したらどうにもならない」。マイカーで道路が渋滞することは福島の事故を見れば改めて言うまでもない。数々の研究機関も道路渋滞を指摘している。 

 「果たしてバスがチャーターできるのか? バスは500台しかない。バスの運転手に放射能汚染地域に行ってもらえるのか? 知事にはその権限はない」「防災体制、避難体制は作った。国は自治体の要望を聞いて頂きたい」。

池田長官は身振り手振りまじえて答えていたが、言い逃れにもならないほどお粗末な話だった。=写真:筆者=

池田長官は身振り手振りまじえて答えていたが、言い逃れにもならないほどお粗末な話だった。=写真:筆者=

 原子力規制委員会の審査はプラント中心であるため、住民の避難対策は おざなり にされてきた。全電源を喪失してメルトダウンが始まるまでわずか7~9時間しかない。この間に30キロ圏内の住民を脱出避難させることが不可能なことは自治体の実験などで実証されている。

 それを認めざるを得なくなった国は場当たりの避難対策を考え出したようだ。池田長官は次のように“ 模範答弁 ”した―

 「セシウム137が100テラベクレル放出した時のシミュレーションをしている。100万年に1回(起きる)と考えている。原発から5キロ以内は予防的避難。それを超える所は屋内避難。30キロ以内だからと言って一斉に避難するのは危険性が高い」。

 嘉田知事は目を丸くしながら問い返した。「福島の事故は2万テラベクレル放出したんですよ。100テラベクレルということは、今のプラントではそれ以上出ないということですか?」

 東京新聞によれば、福島大学環境放射能研究所の青山道夫教授は(福島原発事故によるセシウム137の放出量について)1万500~2万500テラベクレル(テラは1兆)が妥当とする研究結果をまとめ、ウィーンの国際学会で発表した。ノルウェーの研究機関は3万5,800テラベクレルとも見ている。

 100テラベクレルとは、事業者側に立った詐欺まがいの見積もりである。いや、詐欺師でもここまでウソはつかないだろう。

 池田長官は言い訳がましく答えた。「どんどん規模を大きくしていくよりも、ある程度の目安を立てて、そこで避難計画を作る方がいろんな意味で現実的ではないか」。

 これこそ原発事故の過小評価である。かつての原発安全神話から卒業できていないのだ。池田長官の答弁は国の姿勢を端的に示したものだが、詭弁も甚だしい。この国の行政は住民の安全など二の次、三の次であることがよく分かる。

 「防災対策は最悪の場合に備えるのが大原則です」。嘉田知事の言葉を黙って聞く池田長官の後ろ姿に元警視総監の誇りはなかった。

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