「人貸業」といわれる派遣が原則自由化されようとしている。厚労省は「一業務3年」とされていた派遣期限を「働き手さえ変えれば無期限」とできるよう労働者派遣法を改正(改悪)する方針だ。
「議論が尽くされていない」「もっと労働者の声を聞け」「偏っている」…労働者たちがきょう、厚労省前で「労働者派遣法改悪の撤回」を求めてシュプレヒコールをあげた。
大通りをはさんで厚労省のすぐ向こう側は日比谷公園だ。5年前の暮れ、ここに「年越し派遣村」が開設された。リーマンショックで派遣切りに遭い、職と共に住居をも失った労働者に食事と寝所を提供したのである。
派遣村6日間の開設中、500人の失業者が「入村登録」をした。筆者は派遣村開設中、1日も欠かさず日比谷公園に足を運び、失業者の話を聞いた。
年末年始は「日雇い派遣」の仕事さえなくなる。29日(2008年12月)で仕事がなくなったという40代の男性は、30日の夜は都内のビルの地下通路で一夜を明かした。「寒かった。今夜からはこちら(派遣村)のお世話になれる。有難い」と言いながら、湯気の立つおでんとおにぎりをゆっくりと噛みしめていた。
派遣などという労働形態が作り出されなかったら、男性は炊き出しやテントのお世話にならなくても済んだだろう。(2008年12月31日の拙稿より)
安倍政権の目論見通り、労働者派遣法が来年改正(改悪)されれば、正規社員も職場を失う。正社員が派遣社員となり簡単に切り捨てられる。
派遣会社は労働者という品物を売りたい一心でディスカウントする。当然、賃金は下がる。派遣会社同士でディスカウントを競い合うようになれば、賃金は底を打つまで下がるだろう。
安倍政権の目指す労働法制緩和がもたらすのは「雇用破壊」と「低賃金地獄」だ。こうなると派遣村が日本のあちこちにできる恐れも出てくる。悲劇を繰り返してはならない。