エルドアン政権打倒のシンボルともなっているタクシム広場は、警察による厳重な警戒態勢が敷かれている。広場に入ろうとするグループは、ことごとく機動隊の放水と催涙弾に阻まれてきた。広場突入を図り逮捕された人の数は数百人にのぼる。
そこで考え出されたのが、団体ではなく一人ひとりで広場に入るという方法だ。17日夕(日本時間18日未明)、この方法で市民20~30人が広場に集まったが、警察に連行された。
弾圧とも言える警察の対応は口コミやツイッターなどで広まった。「だったら警察が簡単に連行できないほどの大人数で広場を埋めよう」。こう考えた人々が18日夕(日本時間19日未明)、広場に足を運んだ。個人、個人で。
勤めを終えたサラリーマン、夕食の支度を終えた主婦、デートに行く途中のカップル、お年寄り…ありとあらゆる人たちが集まってきた。午後7時頃にはざっと2千人が広場を埋めた。その後も次々と人が押し寄せた。
シュプレヒコールは一切ない。制服警察官100人が遠巻きに見守った。
人々は沈黙したまま、ビルにかけられたアタチュルクの巨大な垂れ幕に向かって立ち尽くした。警察官の隊列に向かって立つ人々も数百人いた。
「あなたたち(警察)は行進を制止した。だから歩かないで止まっている」。青年のゼッケンに書かれたメッセージが事態を象徴していた。
「ボユニ・エーヌ(首を下げるな=屈しないぞ)」。A4版の厚紙を手にした女性は目を閉じたまま立ちつづけた。
「機動隊が放水と催涙弾を浴びせてきたらどうするか?」
「そんなの気にしない」。彼女は機動隊などまったく恐れていないようだった。
個人参加による沈黙の抗議は全国各地で起きていると伝えられている。タクシム広場では警察が機動隊員輸送バス10台、放水車2台を広場端に待機させており、予断を許さない状態が続いている。
◇
関西の篤志家S様ならびに読者の皆様のご支援により、トルコ取材に来ております。