首都アンカラでは「反エルドアン・グループ」と警察との激しい衝突が続いているもようだが、騒乱の発端となったゲジ公園を抱えるイスタンブールでは、静かな抵抗が広がっている。
19日夕(日本時間20日未明)、市内18か所で集会が開かれた。この間警察が丸腰の市民に加えてきた武力鎮圧に抗議する集会だ。
首相の「イスタンブール官邸」があり熾烈な攻防戦が繰り広げられてきたベシクタシの公園ではピアノコンサートが開かれた。ゲジ公園のオキュパイに参加したイタリアのピアニスト、デビッド・マルテロさんが演奏を披露した。デビッドさんは警察が公園を急襲した際、身柄を一時拘束されている。
聴衆は、デビッドさんが一曲弾き終えるごとに、宙に両手をヒラヒラさせて無音の拍手を贈った。「無言の抵抗」の意味である。警察への痛烈な皮肉を込めた抗議の拍手だ。
観光名所のガラタ塔では塔の前にたくさんの靴が供えられた。トルコでは死者が出ると自宅の玄関に靴を置く慣習がある。誰かが靴を持って行くと死者は天国に召されるという、言い伝えがある。
ハイヒール、ブーツ、サンダルなどが並んだ。今回の騒乱で催涙弾の水平撃ちを受けて亡くなった人の霊を弔うもので、警察への抗議が込められている。
タクシム広場には、夕方になると仕事を終えた人などが続々と詰めかけた。昨日よりも目に見えて人数が増えた。3千人は下らないだろう(午後7時30分現在)。人々は沈黙の抗議を続けた。
このうち約300人は、広場の警備にあたる警察の至近距離まで行って、立ち尽くした。
エルドアン首相は18日、AKP(公正発展党)の党大会で「デモに対して警察の介入を強化させる」と述べた。
無言の抗議はあの手この手で広がっている。警察が抑えようのないことに首相は気付いていないようだ。独裁者の独裁者たるゆえんだろう。
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関西の篤志家S様ならびに読者の皆様のご支援により、トルコ取材に来ております