
商店のシャッターに「ファシスト・タイイップ(エルドアン首相)」の落書き。当り前のように街の景色に溶け込んでいた。=カドキョイ 写真:筆者=
イスタンブールはアジア側の中心街カドキョイ。学歴が高く豊かな人たちが多く住む。選挙の際は「マカロニと石炭が通用しない=賄賂が通用しない」地区と言われている。
貧困層への施しが「売り」のエルドアン首相の評判は、ヨーロッパ側よりも悪い。カドキョイの人々を怒らせる“事件”が今起きている。
街のシンボルとも言える「ハイダルパシャ駅・駅舎」を、政府がホテルに変える計画を進めているのだ。20日には最後の列車が着いた。駅舎はイスタンブールとトルコ国内の他都市を結ぶターミナル駅として長年、市民に親しまれてきた。にもかかわらず、政府は地元住民の意見を十分に聞かないまま、ホテルへの改築を決めたのだ。
今回の騒乱の引き金となったゲジ公園周辺の再開発と相似形である。公園の古木・巨木を引き抜いてショッピングセンターにするのが、エルドアン政権の計画だった。「憩いの場を奪われてはたまらない」、危機感を募らせた人々がオキュパイしたのである。
ヨーロッパ側の港から渡し船でボスポラス海峡を渡ることわずか20分。カドキョイの港に着く。件のハイダルパシャ駅は港のすぐそばだ。駅舎を守ろうとする人々が、この日も集まっていた。
「ヘル イェル タクシム、ヘル イェル ディレニシユ=どこでもタクシム、どこでも抵抗」。人々の合言葉のようになったシュプレヒコールが、渡し船のキャビンの中まで響く。

ハイダルパシャ駅の駅舎を守るために集まる人々。=カドキョイ港そば 写真:筆者=
カドキョイの公園では毎晩、市民集会が開かれている。「どうしたら無謀な再開発にストップをかけられるか。エルドアン首相を辞任に追い込めるか」。皆で知恵を出し合うのである。
アイデアのある人はステージに立ち、2分以内で説明する――
「私たちの中から市長を出す」(40代・男性)
「マスコミに来てもらえるような運動にする」(司会者)
「FacebookやTwitterは危ない。警察に見張られているから。他の連絡方法を使わなければならない」(30代・女性)
東京オリンピック(1964年)開催前、東京は再開発ラッシュだった。トルコも似たような状況になっているのだろうが、エルドアン政権は民意に耳を傾けなかった。それが人々の溜まりに溜まった政権への不満を爆発させた。

市民集会。参加者は自分のアイデアを2分以内で発表する。=ヨグチュ公園 写真:筆者=
◇
関西の篤志家S様ならびに読者の皆様のご支援により、トルコ取材に来ております。