福島原発原告団 地検に「強制捜査」要請 チェルノ事故から27年目の日に

雷雨の中、署名提出のため福島地検に向かう原告団。=26日午後、福島市内 写真:田中龍作=

雷雨の中、署名提出のため福島地検に向かう原告団。=26日午後、福島市内 写真:田中龍作=


 
 27年前のきょう(4月26日)、ソ連のウクライナ共和国で世界を震撼させる事故が起きた。チェルノブイリ原子力発電所4号機がメルトダウンし、ウクライナのみならず、陸続きの近隣諸国を放射能で汚染したのである。

 チェルノブイリと並ぶ原子力史上最悪レベルとなった福島の原発事故。安全管理を怠り、事故後の対応もズサンであったため大勢の人を被曝させたとして、福島の住民たちが東電幹部と政府の役人らを業務上過失致死傷罪などの容疑で刑事告訴してから10か月余りが経つ。

 「東電と政府を強制捜査し起訴するよう」求めて住民たちはきょう、新たな署名1,224筆を福島地検に提出した。提出された署名は合計で10万4,990筆にのぼる。

 きょうの福島・中通り地方は悪天候に見舞われた。空には黒い雲が垂れ込め、冷たい雨が大地を打ちつけた。時おり雷音が轟く。

 2年前、原発が爆発し雨の中を逃げ惑ったという住民の話を思い出す。あの時の雨はもっと冷たく恐ろしいものだったに違いない。

 検察庁への署名提出に先立ち、市内の公園で集会が開かれた。

 「このまま不起訴にされてしまうのではないか。懸念がつのる」。福島原発告訴団の武藤類子団長は検察庁への不信を示した。

 「原発は人間が作り出した世紀の大犯罪だということを心しなくてはならない。検察に太い杭を打ち込もう」。こう語るのは福島県本宮市の国分祐紀男さん(77歳)だ。

チェルノブイリ原発から30キロ圏内は事故から27年が経った今も立ち入り禁止だが、避難先の生活になじめなかった高齢者などが戻って暮らしている。政府の「目こぼし」だ。その数わずか100人。=昨年10月、ウクライナ 写真:田中龍作=

チェルノブイリ原発から30キロ圏内は事故から27年が経った今も立ち入り禁止だが、避難先の生活になじめなかった高齢者などが戻って暮らしている。政府の「目こぼし」だ。その数わずか100人。=昨年10月、ウクライナ 写真:田中龍作=

 福島とチェルノブイリの事故を比べた場合、際だって違うのが避難政策だ。ソ連は先ず広い範囲で子どもをはじめ住民を避難させた。後手後手に回った日本と違う。

 チェルノブイリ原子力発電所から30キロ圏内は27年経った今も立ち入り禁止区域だ。避難先の生活にどうしても馴染めなかった高齢者など約100人が戻って来て、元の場所に住んでいるが、あくまでも政府の「目こぼし」である。

 日本はどうだろう。福島第一原発から20キロ圏内の川内村、田村市、葛尾村、南相馬市などの一部は、昨年4月から「避難指示解除準備区域」となった。日中の自由な立ち入りができる。政府は水道、電気を復旧させ、住民を帰還させる方針だ。

 事故から1年でこのありさまだ。しかも20キロ圏内である。ウクライナと比べると、日本政府は放射能汚染に対してあまりに寛容である。驚きかつ呆れる。

 日本政府と東電は避難のための補償金をケチったのである。その代償が今、民事、刑事の訴訟となって襲いかかっている。だが検察は強い者の味方だ。東電と政府を強制捜査するとは限らない。このまま逃げ得となるのだろうか。

 「私たちは何度でも地検に行って訴える」。武藤原告団長は雷雨をついて決意を表した。

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