原子力規制法違反の疑いさえある「原子力規制委員会」の人事案が、今週中にも国会で採決されようとしている。採決が行われれば、民・自・公の賛成で可決される可能性が高い。
危機感を抱く環境団体と市民たちが今日午後、衆院議員の事務所を訪ね、慎重に対応するよう陳情した。14チームに分かれたメンバーは、民・自・公の議員112人の事務所のドアをノックした。
仙谷由人・政調会長代理と前原誠二政調会長などの事務所は、面会自体を拒否した。ドアは開けてくれたが、野田佳彦議員(首相)の事務所はけんもホロロの対応だった。
「お部屋に入ってよいですか?」
「ダメです」
「お話だけでも聞いて頂けますか?」
「とり込んでますので」
秘書は言い終わるが早いかドアをバタンと閉じた。30秒あっただろうか?
解散・総選挙が近づいているため神経を尖らせているのだろう。民主党議員の事務所はいずれもピリピリしていた。
原発が選挙の争点になることは確実な情勢だからだ。有権者の拒否反応が強い田中俊一氏を委員長とする人事案に賛成すれば、選挙が危なくなる。かといって反対すれば党執行部からニラまれ、労働組合の票があてにできなくなる。
ある議員は「党として決めたことなので、反対するということは倒閣と同じ」と苦しい胸のうちを明かした。
「原子力規制委員会」は独立性が高いため、仮に「脱原発政権」が登場したとしても、人事をいじることはできない。原子力村の恩恵に浴してきた人たちは、電力会社の意のままに再稼働の許可を出すだろう。
今国会中に人事案を何としてでも可決させたい霞が関と原子力村が、野田政権と自民党の尻を叩いている。「民の声」を聞くことを知らない民主党の政治家たちを、09年の総選挙で選んでしまったことが後悔されてならない。
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