【国会事故調】 海江田元経産相 菅首相と東電への不信にじます

着席する海江田万里・元経産相。国会事故調は国会議員の参考人聴取を始めた。=17日、参院会館。写真:筆者撮影=

着席する海江田万里・元経産相。国会事故調は国会議員の参考人聴取を始めた。=17日、参院会館。写真:筆者撮影=


 福島第一原発の事故原因を究明する『国会事故調』は17日、発生当時経産大臣だった海江田万里氏から事情を聴いた。海江田元経産相は勝俣東電会長のように官邸や部下に責任をなすりつけるようなことはなかった。答弁を貫いていたのは、菅首相と東電への不信感だった。

 東電は経済性を最優先し、安全性は二の次、三の次だった。野村修也委員が「東電が塩分の含まれた水(海水)の注入をためらっていたとされる根拠は何か?」と聴いた。

 海江田氏は「早い段階から廃炉と私どもは思っていたが、東電はそのようなステートメントは出していなかった」と答えた。この期に及んで東電は原子炉を再び使おうと考えていたのである。何という吝嗇ぶりだろうか。

 海水注入をめぐっては、官邸が「再臨界の恐れがある」として中断を指示した。だが発電所の吉田昌郎所長が官邸に内緒で海水を注入し続けた。「吉田所長の判断は正しかったか?」と聴かれた海江田元経産相は「結果的に中断しなかったことが良かった」と答えた。官邸の横ヤリが間違っていたことを認めた格好だ。

 渋る東電を官邸が命じてベントをさせたといわれるが、海江田氏は次のように振り返った―

 「この期に及んでも事故を小さくみせるためにベントをためらっているのかなと思ったが、そうではなかった。(東電が)2班決死隊を作った。一企業が(ベントをしろと)命令するよりも国が命令を出して後押しをするため」。

 「(それでもベントを)なんでやらないんだと気を揉んだ。まだ完全に前者(事故を小さく見せる)の意味が払しょくされたわけではなかったので、2つの考えがあってそうした」。

海江田氏は慙愧の念に堪えなかったのか、時に下を向き時に天を仰いだ。=写真:筆者撮影=

海江田氏は慙愧の念に堪えなかったのか、時に下を向き時に天を仰いだ。=写真:筆者撮影=


 事故直後、東電は「全員撤退させたい」と官邸に告げてきたとされるが、勝俣会長は14日の国会事故調で否定している。海江田氏は次のように証言した―

 「清水社長から電話があった。第一発電所から第二発電所に退避したい、という言葉を使った。(私には)“全員が撤退”という意識が頭にあった。あとで枝野官房長官のところにも清水社長から電話があったと仄聞した。そういうこと(全員撤退)なら大変だ東日本がだめになる、現地の人にがんばってもらわなくてはいけない。東電に行こう、統合本部を作ろうということになった」。

 菅直人首相の指示が現場を混乱させたことは、つとに指摘されている。野村修也委員が現場職員から聞いた話として明らかにした――

 「(菅首相が)サイト(福一)に何度も電話を架けてきた。ニュアンスとして飛行機はなぜ飛ぶのか。墜落させないようにするにはどうしたら良いのか。この職員は迷惑だった、と話している」。

 石橋克彦委員が「地震の多い日本で再稼働などと言うが、安全確認はキチンとできるのか?」と聴いた。海江田氏の答えからは事故の断面が覗いた― 

 「ヒューマンリスクのこともあるのではないか。女川に行った時、東北電力の技術者からこう聞かされた。『東北電力は全部で4基しかない。一つ一つ丁寧に大切に運転している。東電は十数基もあり、そこ(丁寧な運転)が希薄になっていたのではないか』」。

 安全性よりもひたすら利益を優先する東電が事故を発生させ、無能で自己顕示欲の強い首相が事故を拡大させた。海江田元経産大臣の証言からは、当時の事情が透けて見えた。

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