遺伝子組み換え食品に危機感を持つ首都圏の市民らと共に、茨城県稲敷郡河内町にある「日本モンサント隔離ほ場」を訪ねた。叩きつけるような雨のなか、田園地帯を進むと、鉄柵と金網で厳重に囲まれた「ほ場」があった。
『試験栽培中につき関係者以外の立ち入りを禁止します』の看板が、ものものしい。訪問ツアーを企画した地元男性(50代)は「警戒が厳しくなっているなあ。去年の秋まではこんなじゃなかったのに…」と忌々しそうに呟いた。
2,000㎡余りの「ほ場」では、2004年から遺伝子組み換え作物が栽培されている。前出の地元男性は、少なくとも「とうもろこし」と「大豆」の2種類を確認した、という。日本モンサント社のHPでも紹介されている。
「ほ場」から飛んできた花粉を周辺農家の作物が受粉すると、モンサント社から知的所有権の侵害で訴えられる可能性も出てくる。(今のところハウスに覆われているが)
ルナ・オーガニックの安田美絵氏によれば、アメリカやカナダでは、同社の花粉を受粉した近隣の農家が訴えられたケースが何百件とある。破産した農家も多い。
「ほ場」の周辺には大豆を栽培している畑があるが、地元農家はモンサントが思いもよらぬ訴訟をふっかけてくる企業であることをあまり知らないのではないだろうか。マスコミが報道しないこともあって。
「日本にモンサントの農場があったことに驚いた。一度見てみようと思って(ツアーに)参加した。遺伝子組み換えは危険なイメージがあるので、『組み換えなし』表示の製品をいつも買っている。TPP加盟で表示できなくなったら食の安全がなくなる」。都内在住の会社員(女性・40代)は危機感を募らせる。
「TPPで日本がひっくり返る。遺伝子組み換えは、取り返しがつかないくらい危険。モンサントは悪徳企業だ。なぜ日本のマスコミは報道しないのか」。埼玉県川越市から遠路訪れた主婦(40代)は口を尖らせながら話した。
米国とTPP交渉のテーブルについたら拒否できなくなるとの指摘があるが、事態はそんなに悠長ではない。すでにモンサントは日本で遺伝子組み換え作物の栽培を始めているのである。まるでトロイの木馬のように。
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