再稼働問題で注目が集まる大飯原発を撮影しようと車を走らせた。『関西電力大飯発電所』と大きくペイントされたトンネルの入り口に差しかかると、警備員から止められた。
警備員は取材車だと分かると「通行はお断りしています」と告げた。写真を撮ろうとする筆者に「撮影も止めて下さい」と立ちはだかった。
「公道じゃないか!」
「いいえ、ここは関西電力の私有地です」。
発電所の敷地の中ではない。漁師町に降りる道との分岐点にあたる普通の道路なのだが、電力会社の私有地であることに些かたじろいだ。
もし大飯原発3・4号機が再稼働すれば、東電・福島第一原発の事故以来、「定検後の再稼働」は、初めてとなる。脱原発の世論の高まりを受け、警戒は厳重だ。
原子力発電所は山に遮られて見えなかった。地元漁師に「どうしたら撮影できますか?」と尋ねると、「登山するか、船を出すしかない」ということだった。
建設から再稼働に至るまで、庶民の手の届かないところで決まる。この国の原子力行政を象徴しているようであった。
◇
『田中龍作ジャーナル』は読者の寄附によって支えられています。