28日、経産省前「脱原発テント」―退去期限から一夜明け、警察官も大勢の支援者もいない静かな週末を迎えた。マイクのボリュームを一杯にあげた演説と鳴り物が響き、制服警察官の警備でものものしかった前夜の興奮が嘘のようだ。
午前8時半、経産省の警備担当者(経産省職員)がビデオカメラを手に訪れた。「(テントの)責任者の顔を写したい」。「ダメだ。カメラは下に向けろ」。警備担当者は声だけ録音して帰った。
午前10時半、警備担当者は再びテント前に現れた。前回同様、ビデオカメラを携えている。「(どうしても)責任者の顔を写したい」と迫ったが、テント側は「ダメだ」と突っぱねた。
27日の夜は支援の市民が去った後で、強制排除に乗り出すのではないかとの危惧があった。男性テントは、普段の倍の8人が泊りこんだ。女性テントには、日頃より1~2名多い4人が泊った。福島の女性2人、鎌倉からと横須賀から一人ずつだ。
この日の夜、横須賀の女性(40代)は、仕事が終わった後、押っ取り刀で応援に駆け付けた。テントに足を運ぶのさえも初めてという。横須賀の女性に限らず「テントを守るために経産省前に来た、これが初めて」と話す市民は少なくなかった。
市民の支援を受けてテントを守る当事者も熱が入る。女性テント呼びかけ人の椎名千恵子さんに、経産省が強制排除に乗り出してきた時の対応を聞いた。「ごぼう抜きにされても、また戻って来て座り込む。臭い飯を食う(逮捕される)のも覚悟している」。椎名さんは本気だ。
28日は脱原発のシンボルとなりつつあるテントが、存亡の危機に晒されていることを聞きつけた人たちが続々と訪れた。学生はじめ若者の姿が目立つ。椎名さんらが、放射能に汚染された地元福島の実情を具体的に話すと、来訪者は静かに聞き入った。
27日夕の光景が再現されれば、経産省もテントの撤去は難しくなる。下地はできつつある。