「7割が菅氏の続投を支持している」「小沢氏は世論と戦わなくてはならない」……
民主党の代表選をめぐる大手マスコミの論調はこんな具合だ。大方の国民が『民主党の代表には菅氏が相応しい。小沢氏の出馬には無理がある』と考えている、と読めるし聞こえる。
27日の朝日新聞・朝刊は“圧巻”だった。天声人語で菅氏を誉めそやし、社説では「あいた口がふさがらない」と小沢氏をこき降ろした。 だがTwitterやブログなどインターネット上を駆けめぐっている国民の意見とは、大きくかけ離れている。ネット上では、菅首相の能力不足を憤る声の方が断然勢いがある。記録的な円高・株安となってから、菅首相への批判は厳しさを増している。「反菅」だ。
大手メディアの「小沢嫌い」は根強い。政治部長や編集局長などは第一線の記者だった頃、マスコミ嫌いの小沢氏に手こずらされたからだ。記者とはろくすっぽ口をきかないし、たまに口を開いたと思ったら一刀両断に斬って捨てるような横柄な言葉を浴びせられる。こうした態度は今もあまり変わらない。報道機関は上から下まで「小沢嫌い」で固まっている、といっても過言ではない。
かつて自民党の老練な政治家は記者たちと上手に付き合っていた。正確に言えば記者を上手に利用する。自民党の政治文化のひとつだった。飲み食いはもとより海外旅行に連れていくなどして記者を懐柔した。政治部記者に多額の現金が渡されていたとする官房機密費はその象徴でもあった。
ところが小沢氏には記者を抱きこむなどという発想は微塵もない。こうしたことも大手メディアの記者が小沢氏に反感を募らせる要因にもなってきた。
小沢氏が政権を握ったりすると大手メディアは社運に関わるほど困ったことが発生する。大手報道機関と永田町、霞ヶ関は利権を分け合う強固なトライアングルがあるからだ。
最たるものは、新聞社によるテレビ局の所有だろう。これを認めているのは先進国で日本だけだ。多様な言論を保障する民主主義の原則に反するため欧米では法律で禁止されているのである。
政治家は地方テレビ局、全国紙は在京キー局、地方紙はローカルテレビ局の大株主となる。総務省は電波の許認可権を持つ。これで3者(政・官・報)が潤うのである。記者クラブとは大手メディアの出城だ。霞ヶ関の全省庁、首相官邸、各政党など主要機関には必ずと言ってよいほど記者クラブがある。戦国大名も目を回すほどの完璧な出城だ。
小沢氏はこの記者クラブをオープン化しようとしているのである。メディアが反小沢キャンペーンに血眼になるのも当然だ。ただでさえ不景気で広告収入は落ち経営が苦しくなっているところに利権の巣を奪われたのでは堪ったものではないからだ。
小沢氏が戦うのは世論ではない。正確に言うと、小沢氏は世論を形成する(と自分だけで思い込んでいる)大手メディアと戦わなければならないのである。
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