放射能を逃れて福島から東京に避難している人々がきょう、住宅政策をめぐって政府と交渉を持った。住宅の無償供与は2016年3月末までとされているが、「その先どうなるのか?」などと質した。(主催:キビタキの会※)
政府側は復興庁、内閣府、国土交通省などから若手官僚9人が出席した。
政府の回答は驚きかつ呆れることばかりだった。質問項目は予め政府に送っている。
「原発事故によって(福島から)東京に避難してきた住民は何世帯・何人か?」とする第1問目に政府側は「正確に把握していない」と答えた。対象者の規模が分からないまま国は政策を進めているのだろうか?
避難者の誰しもが不安を抱くのは「いつまで無償で住めるのか?」だ。今のところ2016年3月末までは無償が保証されたが、その先は見えない。
住民が「長期安定居住にむけて基本方針の見直しはあるのか?」と聞くと、政府は「未定。いずれやって(延長して)行かなくてはいけないと思うが今は言えない」。
続いて住民側は「原発は国策で進めてきたのだから、包括的に漏れのないような枠組みと新しい法律を作ってほしい」と迫った。
政府側は次のように答えた―
「ひとまず避難指示区域の住宅確保については、それぞれの受け入れ自治体とコミュニティ復活交付金(正確には福島再生加速化交付金)を使い、協議しながら整備を進めている」。
「4890戸の復興公営住宅のうち、3700戸の用地を確保し、残りは今年度上半期中に土地を取得。家賃に関しては無償ではないが、家賃を低廉化する。国交省が進めている」。
自主避難者、避難指示区域外の住民への対策が全く触れられていない。現在進めている施策だけを強調した。しかも避難指示区域であっても無償でないことが判明した。本当だとすれば、恐ろしい話だ。
南相馬市から知人宅に3年の間身を寄せている自主避難中の女性は、都営に入りたいと申請したものの、一般都民と同じ方法でしか入れないと断られたという。
女性は「行政に頼ってこなかったのが裏目に出た。本当に困っています」と訴えた。
だが政府側の答は耳を疑うものだった。「正直(救済方法は)持っていない。あるとすれば生活保護」。若手官僚は事務的に告げた。
交渉終了後、女性は両目を赤くしながら「予想以外の言葉。ちょっと腹立たしい」と憤りを露わにした。
~福島県の意向で復興住宅建設~
最終盤、住民側は核心に触れる質問をした。「どうして福島に復興住宅を建てるのか?どうして福島に帰そうとするのか?」と。
政府側は次のように答えた―
「(復興住宅は)県外に作ってはいけないとは明記していない。町外拠点ということなので、避難元の自治体との協議が非常に重要になってくる。今の所、ここにぜひ作って欲しいという声が上がっていないことも事実。また福島県が協議に入ることになっているので、県の事情というのもいろいろあると思う」。
いかにも官僚答弁らしく まどろっこしい。“翻訳”すると以下のようになる。
国としては、復興住宅は必ずしも「福島県内に作らなくてはならない」とは言っていない。今のところ福島県外に作ってほしいという要望はない。福島県の意向が反映されるので、復興住宅は福島でということになる。(住民は福島に戻らなくてはならなくなる)
避難先での住宅費の無償制度は2016年3月末以降どうなるのか分からない。一方で福島での復興住宅建設計画は着々と進む。それも有償だ。国家が 追いはぎ を働くようなものではないか。
「子どもを守りたいだけで避難生活をしている。福島は帰れる状況ではない。そんな所に小さな子供を連れて帰れない。安全な環境で子育てをしたい。無償住宅は大切です」。いわき市から避難し4歳の子供と江戸川区の都営住宅で暮らす母親は、すがるような面持ちで話した。
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※キビタキ
福島県の県鳥
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