集団的自衛権の行使を可能にする憲法第9条の解釈改憲が大詰めを迎えている。戦争への扉の一歩前といった状態だ。
自民党安全保障調査会の岩屋毅会長(衆院議員・大分3区)がきょう、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見した。
「我が国を取り巻く環境が急速に悪化している」「(憲法解釈が)このままでは我が国や地域の安全を守ることができない」。岩屋会長はこのように述べ集団的自衛権の行使と解釈改憲についての理解を求めた。
「環境の悪化」とは、尖閣列島の領有権を主張する中国の拡張主義や北朝鮮のミサイル発射を指すものとみられる。
「此ノ間却ツテ益々經濟上軍事上ノ脅威ヲ增大シ以テ我ヲ屈從セシメムトス斯ノ如クニシテ推移セムカ東亞安定ニ關スル帝國積年ノ努力ハ悉ク水泡ニ帰シ帝國ノ存立亦正ニ危殆ニ瀕セリ事既ニ此ニ至ル帝國ハ今ヤ自存自衞ノ爲蹶然起ツテ一切ノ障礙ヲ破碎スルノ外ナキナリ…」。(開戦の詔勅)
(現代語訳)経済的軍事的脅威がこのまま続けば東アジアの安定のために日本が払ってきた努力は水泡と帰す。自存と自衛のために決然と立ち上がるしかない…
岩屋会長の説明は先の戦争における「開戦の詔勅」と同じ理屈ではないか。
岩屋会長は記者団の質問に次のように答えた―
ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー誌(軍事専門誌)記者:日本国憲法を英語で読むと陸海軍のWar Potentialを持たないという。自衛隊はおろか、三菱重工業の戦車製造能力なども持たないということだ。外国人の目から見れば実態とかけ離れている。リーガルマインドが無いのでは。また憲法改正も視野にいれているか?
岩屋:おそらく憲法制定当時はそういう思いだっただろうが、どの国といえども自然権としての自衛権はある。その時の解釈変更こそが過去必要最大の解釈の変更だった。湾岸戦争の後にPKO法を作り、イラク特措法、テロ特措法などを作り海外に自衛隊を派遣し、そのつど憲法解釈を補強・補充してきたと言える。今回の作業もその一貫だ。
自民党はすでに憲法改正草案で、9条2項を取り払って「前項の規定は自衛権の行使を妨げない」と書いた。自民党案で憲法改正を国民に問う時には同じ議論になるので、この段階でしっかりしておくべきだと思う。
田中:イタリアのサルデーニャ島にミサイル射撃場がある。国際上、敵対していてもそこを使っている。アメリカもイランも(同じミサイル射撃場を)使う。(武器)メーカーや各国もそれぞれにデータを持っている。集団的自衛権だ、武器輸出三原則の緩和だ、平和に資すると言っても軍事メーカーに儲けさせるだけの拡張ごっこではないか?
岩屋:一方に外交努力、一方に軍事的抑止力がある。アジアの安全保障・軍事環境は急激に変わっているのは事実。必要最小限の抑止力をキープすることを理解して欲しい。武器輸出三原則では官房長官が例外と言えばOKだった。NSCができたので、課長級から閣僚級会議で審査し、結果は国民に知らせていく。
記者団との質疑応答では淀みなく答えた岩屋会長だが、世論調査の数字が気がかりなようだ。
集団的自衛の行使について尋ねたマスコミの世論調査では、毎日新聞「反対:64%」「賛成:30%」、朝日新聞「反対63%」「賛成:29%」となっている。「反対」が「賛成」の2倍以上あるのだ。
岩屋会長は「世論調査を見ると厳しい。残念ながら国民の皆様に説明できていない」と率直に認めた。
世論の反対を力で押し切る。特定秘密保護法の時と同じだ。いつか来た道に向けて国家が暴走し始めた。
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