経産省原子力安全・保安院はきょう、原子力の安全性を審議する専門家委員のうち、少なくとも12人の委員が原発メーカーや電力会社などから報酬を受け取っていたことを明らかにした。12人は大学教授や名誉教授といった学識経験者が中心。
保安院は贈った側の企業名ともらった側の専門家委員の氏名は公表していない。もらった金額についても、最高金額が1人年間500万円という他は明らかにしなかった。
きょう午前の記者会見で、筆者は保安院の森山善範審議官に次のように質した――
「専門家委員は国の原子力行政を左右する権限を持つ。なおかつ国立大学の教授であれば、立派な収賄だ。審議を委託する保安院として収賄で刑事告訴するつもりはないのか?」
森山審議官は「(当人から事情を聞いた結果)個別の案件には影響していない。審議会の中立性を損ねていない」と否定した。
官僚や学者は、どこまで世間の常識を逸脱すれば気が済むのか。呆れる他ない。
「金をもらえば、金をくれた相手に手心を加えるのは世間の常識ではないか?」と食い下がったが、森山審議官は「個別の案件に影響していない」と繰り返した。(※筆者と森山審議官の詳しいやりとりはIWJの録画でご覧頂きたい。)
日本原子力学会が、使用済み核燃料の輸送容器に関する検査基準を国の基準より緩くして議決していたのだが、審議を主導していた有富正憲・東工大教授が容器メーカーから多額の献金を受けていた事実を保安院も認めている。
大飯原発3号機のストレステストを可とした保安院の評価に御墨付きを与えた専門家委員の岡本孝司・東大教授も原発メーカーから200万円もの献金を受けていた。岡本教授は意見聴取会の司会進行役である。
保安院はきょう夕方、原子力安全委員会にこの評価結果を報告する。安全委員会の班目春樹委員長の研究室はじめ複数の委員は、何らかの形で原発メーカーや電力会社から多額の寄付(計8500万円)を受けていた。
どの委員会も「原発再稼働ありき」で議事が進むはずである。
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