経産省原子力安全・保安院は13日、原子力安全委員会(班目春樹委員長)に「大飯原発3、4号機のストレステストは妥当」と報告した。
保安院側は「大飯原発の安全性」を強調しながら一気にまくしたてた―「想定の1・8倍の地震、高さ11・4メートルの津波が来襲しても十分余裕がある」「約30項目にわたるシビアアクシデント・マネジメント策に加え、電源車や消防ポンプ配備などの安全対策を実施している」……
さらには「保安院の評価基準はIAEAの安全規制と符合する」とまで言う念の入れようだった。
委員の一人が形ばかりの質問をしただけで、13日の安全委員会はわずか30分で終了してしまった。原子力安全委員会は、学識経験者からなる検討委員会を発足させ、保安院の報告を吟味する。班目委員長は「3月いっぱいに結論をまとめたい」と見通しを述べた。
保安院が新組織に移行する前の3月末までに「大飯原発再稼働」のメドをつけておきたいのだろう。
原子力委員会の終了後、班目春樹委員長が記者会見を持った。筆者は次のような質問をした―
「保安院は電力会社の報告を追認し→原子力安全委員会は保安院の報告を追認する。結局、原子力行政は電力会社の言いなりではないか?」
班目委員長は「改善すべき点は指摘している」。
「では、その議事録を見せて下さい。保安院の意見聴取会で保安院が電力会社をハタと困らせている場面を見たことがない。原子力安全委員会が保安院を困らせるような質問をしている場面を見たことがない。なぜこんなに早く終了するのか?」
「保安院と打ち合わせして長引かないような努力をしている」。班目委員長は原子力安全委員会と保安院が談合していることを自ら明かしたようなものである。
【研究費という名のワイロ】
保安院はこの日、「12人の専門委員が原発メーカーや電力会社から報酬を得ていた」事実を公表した。
筆者は班目委員長に「検討委員会の中に原子力産業から献金を受けている委員はいないのでしょうか?」と質問した。
「お金を貰ってるって意味が分からないんですけど、あっ、研究費のことですね?」とあらかじめトボケた班目委員長は「(行政の中立性)とコンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反)を考えて適正な人を選んでいる」と述べ、委員に金銭供与があることを認めた。
「営利企業が見返りも求めずに金を渡すはずがないじゃないですか?」と筆者。
「そういうことも含めて適正な人を選んでいる、ということです」と班目委員長。(筆者と班目委員長の詳しいやりとりは IWJのch5 で視聴して下さい)
この人たちの頭には賄賂の認識がないようだ。原発事故は起こりうる、ひと度発生すれば大惨事となるという認識も同様にないようだ。
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