ついに真打が登場した。東京電力はけさ、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に向けた安全審査を原子力規制庁に申請した。柏崎刈羽原発は事故を起こした福島第一原発と同じ沸騰水型(BWR)。沸騰水型の安全審査申請は初めてだ。
四国電力の伊方原発、北海道電力の泊原発などに2ヵ月半余り遅れての安全審査申請となった。
オフィスアワーが始まったばかりの午前9時30分、東京電力の姉川尚史・常務取締役が設置変更許可等の申請をするために原子力規制庁を訪れた。設置変更とは新規制(新安全)基準に定められたベントフィルターのことだ。
大勢の報道陣が見守るなか姉川常務は原子力規制庁の山形浩史・安全規制管理官に申請書類を提出した。
東電はベントフィルターも含めて柏崎刈羽原発の設備が新規制基準に適合しているかを規制庁に審査してもらう。新規制基準は一般に安全審査と言われている。
申請を終えた後、姉川常務は ぶら下がり記者会見に応じ次のように答えた―
記者:新潟県が了承するまでベントは使わないということになっているが?
常務:地域が定める防災計画ときちんと整合をとって運用する。すなわち了解が得られなければ扱わないという趣旨になるかと思うが、(申請書は)そのような昨日の条件にそった記載になっている。
記者:フクイチが収拾つかない中での再稼動申請に批判の声が上がっているが?
常務:汚染水の問題が十分に安定した状態になっていない。皆さんにご心配をおかけしている。全社を挙げて取り組んでいく。解決を図っていくと申し上げているとおり、総力を挙げて福島第一の収束に取り組んでいく。
姉川常務は型どおりのコメントに終始した。
東電は10月と12月に大規模な融資の借り替えを予定している。国に提出した総合事業計画には柏崎刈羽原発の再稼動が入っており、安全審査申請をしなければ、銀行から電力料金の値上げを迫られることになっていた。切羽詰まっていたのである。
東電の廣瀬社長はきょう(27日)、国会の閉会中審査に参考人招致されている。新潟県の泉田知事も県議会の代表質問を受ける。
25日に廣瀬社長が泉田知事と面談し、翌26日に知事は東電の安全審査申請を容認する。そしてきょう東電は規制庁に事実上の再稼働申請をした。一日きざみのスケジュールだ。でき過ぎたシナリオを描いたのは誰だろうか?
歴史上ない大規模な交通事故を起こしたドライバーが、事故の後始末もついていないのに、「再びハンドルを握りたい」と当局に申請した。