背景に何があったのだろうか? 新潟県の泉田裕彦知事がきょう午後、柏崎刈羽原発6、7号機をめぐり東電が原子力規制委員会に提出する安全審査申請を条件付きで容認することを明らかにした。
安全審査申請は再稼働の前提となる。原子力規制委員会(田中俊一委員長)が新規制基準に適合していると判断し、地元(新潟県、柏崎市、刈羽村)が合意すれば、東電は柏崎刈羽原発6、7号機を再稼働できる。
泉田知事はきのう(25日)午後、新規制基準の条件となるベントフィルター設置の要望書を提出に新潟県庁を訪れた東電の廣瀬直己社長と面談した。
面談から3時間後に行われた ぶら下がり記者会見 で泉田知事は「(廣瀬社長の説明では)なるほどとは思えない」などとして東電の安全対策に不信感をにじませていた。
「(東電への)回答はここ一日、二日のうちにするのか?」とする記者団からの質問に対しても、「先ずは担当部局と相談してから」と答えた。すぐには行かない、としか受け取れなかった。
急展開の背景に何があったのだろうか? 思い至るのは、5日に新潟県庁で持たれたメディア懇談会だ。「第2の佐藤栄佐久氏(前福島県知事)になると思ったことはないか?」と筆者が質問しところ、泉田知事は「ありますね」と答えた。「黒塗りの車にビタっとつけられた時は気持ちが悪かった」と話した。
東電のプルサーマル計画に反対していた佐藤栄佐久・前福島県知事は、実弟の不正土地取引の疑いをめぐる収賄罪で東京地検に逮捕、起訴された。収賄金額はゼロ円という奇妙キテレツな汚職事件だった。国策捜査のはしりである。
検察庁は福島原発事故で住民を死傷させたとして告訴されていた東電経営陣や政府高官を全員不起訴にした。工場が事故を起こすなどした時はすぐに家宅捜索に入り、会社幹部を逮捕する検察庁なのだが、原子力ムラには手が出せないようだ。
その検察庁が「泉田知事をターゲットにした」との記事が『サンデー毎日』(10月6日号)に掲載された。同誌は地検特捜部関係者のコメントとして次のように書いている――
「地検上層部からの指示で泉田知事を徹底的に洗っています。立件できれば御の字だが、できなくても何らかの圧力を感じさせることで、原発再稼働に軌道修正させる助けになりたい考えではないか」。
昨夜の段階では「規制基準をクリアしても安全は確保できない」とまで話していた泉田知事が一転、容認した背景には「何らかの圧力」があったのだろうか。
泉田知事の容認を受け、東電は明日(27日)、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に向けた安全審査申請書を原子力規制庁に提出する。