国が提訴した「脱原発テント撤去請求」の取下げを求める福島の住民や支援者が今夕、経産省の正門に座り込んだ。脱原発テントの渕上太郎代表によれば、経産省の敷地に深く入り込んでの座り込みは初めて。
私服はもとより制服警察官も出動し、同省正門付近は一時、緊迫した。テントをめぐって自民党政権が裁判に訴える強硬手段に出たことで、脱原発勢力との対立は一層厳しくなった。
きょう午後5時、福島の女性やテントに詰める市民たちが、「脱原発テント撤去請求」の取下げを求める請願書を大臣官房に直接手渡すために、経産省を訪れた。事前のアポも取りつけていた。請願書には2500余筆の署名が添えられている。
ところが経産省側は「代表1名としか会わない」と絞りをかけてきた。市民たちは「福島の女性とジャーナリストも入れろ」と要求。
経産省の警備担当職員との間で「入れろ」「入れさせない」の押し問答がしばらく続いた。警備会社のガードマンが正門の内側に横一列に並んで立ちはだかった。経産省側は一歩たりとも入れさせない構えだ。
30分が経過した頃、福島の女性はじめ市民5~6人が座り込んだ。4~5人が後に続き10人での座り込みとなった。正門の内側、ガードマンの足元に身を入れた男性もいた。4~5m後方からは応援の市民約100人が、座り込みを見守りながら経産省に抗議のシュプレヒコールをあげた。
「局舎管理の妨げになります」、経産省の警備担当職員が警告を発する。座り込みの10人は、一向にひるまない。制服警察官が両脇についた。鳴り物も加わって抗議のシュプレヒコールは一段と賑やかになった。
座り込みが始まって1時間が過ぎた頃、「経産省側」が妥協案を出してきた。「2人入れる」とする提案だ。不満足ではあるが市民側は飲んだ。
テント幹部の高瀬晴久さんと郡山市在住の黒田節子さんが、皆に見送られながら経産省の庁舎内に入った。座り込みは解かれた。
座り込んだ時の心境を黒田さん(写真・上段)は次のように話した―
「福島の苦しみをもっと知ってほしい。ただ単に話を聞いてほしくて来ただけ。ゲバ棒を持っているわけではないのに、なぜこんな目に遭わなければならないのか。簡単にあきらめるわけにはいかない。あきらめもしない、という意志表示で座り込んだ」。
「私たちの怒りは留まることがないからね。また何百人で(経産省前に)来るからね」。黒田さんは面会した大臣官房の担当者に言い置いて経産省を後にしたそうだ。
「脱原発テント撤去」裁判の第1回目口頭弁論は今月23日に行われる予定だ。法廷は傍聴席が40数名分しかない小さな部屋だ。被告のテント側は「傍聴席が最も多い法廷を用意するよう」東京地裁に求めて交渉中である。
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相棒の諏訪都記者は通訳で渡航中のため、7月半ばまでお休みします。