「子どもの日」の定義は2011年を境に変わった。「子どもの健やかな成長を願って…」は桃源郷での夢物語となった。「子どもを放射能から守る」ことで親たちは懸命なのである。
原発事故から3回目の「子どもの日」となった今日、「子ども・被災者支援法の実現を求める」集会・デモが都内であった。(主催:放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会)
「子ども・被災者支援法」。正式名称は「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」。めまいがするほど長たらしい名称だが、その名称が示す通り原発事故による被災者を支え助けるための法律だ。
だが、実態は逆である。3月に復興庁が「被災者支援パッケージ」なるものを発表したが、今年度事業として予算計上されている施策のほとんどは、福島から出さないようにしたり、帰還させたりする事業となっているのだ。
これでは「被曝させるためのパッケージ」だ。福島県内ではすでに3人の子どもに甲状腺ガンが見つかり、7人の子どもに甲状腺ガンの疑いが持たれている。親の不安をよそに政府は避難指定区域を解除し、子どもをはじめ住民を帰還させる方針だ。
東日本の多くの住民は、放射能の線量が年間1mSv以上の地域を支援対象とするよう求めている。ウクライナでは1mSv以上の地域は「避難の権利区域」として確立されており、避難する住民には行政から住宅補助などが出る。
日本に当てはめると福島県のほとんど、栃木県、茨城県、千葉県、東京の一部が「避難の権利区域」となる。これでは東電と政府は補償しきれない。ゆえに政府は避難の基準を年間20mSv以上と定めているのである。 “20か所までだったらDNAは傷ついてもいいよ” “ガンになっても構わないんだよ” 政府はこう宣言しているようなものだ。
「1mSvと書いたらこの法律は潰されていた」― 子ども・被災者支援法を議員立法で提出し成立に漕ぎつけた谷岡郁子参院議員(みどりの風代表)は、こう内実を明かした。国際的な基準である1mSvを認めない日本政府。“命よりもカネが大事”と批判されても仕方がない。
『子どもたちを守る全国小児科医ネットワーク』の山田真医師は次のように警鐘を鳴らす―
「(日本が)これほどひどい国とは思っていなかった。ベラルーシやウクライナの方がよほどいい。(日本では)大規模な被害隠しがシステム化されている。因果関係を立証する公害闘争よりも、もっと大きな力がこれから要るようになる」。
親でさえ結果を知るのが困難な福島県の県民健康調査などは、データ隠しの典型である。
「子どもがたんぽぽの花を見て“摘んでいいの?” と母親を見上げる。子どもたちは(放射能に)敏感になっている」―『放射能から子どもを守ろう関東ネット』の柴田圭子さんは訴えた。
政府が子どもに国際基準の20倍もの被曝を強いようとする国に未来はない。「子どもの日」に込められた意味を政治家、官僚はしっかり考えるべきだ。