「大飯原発3・4号機の再稼働には地元の容認が必要」というフレーズをよく見聞きするが、地元福井県政は再稼働ありきで動き始めたようだ。
再稼働問題などを審議する福井県議会2月定例会が24日から始まった。冒頭、西川一誠知事は「原発の安全性を徹底的に高め、原子力の安全の新たな出発としなければならない…(中略)国は暫定的な安全基準を示す必要がある」と述べた。
行政の文脈では「政府が暫定的な安全基準を示しさえすれば、再稼働を容認しますよ」ということだ。国からの交付金に加えて、電力会社からの寄附金に支えられている自治体の原発依存体質が、そうさせるのだろう。
道路を作る、体育館を建設する、公民館を建てる…ありとあらゆる事業に電力会社から寄附金が出る。「西川知事が目論んでいるのは新幹線」と見る向きもある。大飯原発の再稼働容認と引き換えに、着工が遅れている北陸新幹線の敦賀までの延伸を実現させようというのだ。
県議会の傍聴席は満席となった。過去満席となったケースは極めて少ない。県民の関心の高さを伺わせる。傍聴席には脱原発を掲げる俳優の山本太郎さんの姿も。
地元建設業者や右翼団体など再稼働推進派が10人近く押し掛け、再稼働反対派の県民にプレッシャーをかけた。さらには山本さんに「売名行為をするな」などと罵詈雑言を浴びせた。原発マネーのおこぼれ欲しさか。
福井県北部の三国町から足を運んだ主婦は、再稼働反対派だ。「認められない。原発が止まっても原発労働従事者がちゃんと食べて行けるようにするのが行政の役目。福島の事故で恐ろしさを見せつけられた。人の命の重さに気付くのが遅すぎた」。主婦は思い詰めたように話した。
「昔は原発が半分止まったら大変なことになるって聞いていた。今、全部止まっているけど何もなってない。電気のむだ使いさえある」。越前市の女性(30代・自営業)はシニカルな笑みを浮かべた。
西川知事は、この日の所信表明のなかで観光立県に向けたプランを述べた。ひとたび事故が起きれば大惨事となる原発が14基もひしめく県に、果たして観光客が足を向けるだろうか。
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