「大飯原発3・4号機の再稼働は国会事故調の結果を待て」。電力業界や保安院が3月末までの再稼働決定に向けて前のめりになるなか、福島みずほ社民党党首らが20日、国会議員47人の署名を政府に提出した。
宛先は運転再開の政治判断をする4閣僚(野田総理、枝野経産相、細野原発担当相、藤村官房長官)である。
福島第一原発事故前も事故後もズサン極まりない対応をしてきた班目春樹委員長率いる原子力安全委員会に審議させたのでは、安全性に疑問が残りすぎる。それよりも原子力村の影響を極力排除した「国会事故調」の方が、はるかに信用がおけるというのである。事故調は6月頃をめどに結論を出す。
署名提出はこの日の院内集会のメインイベントだった。ストレステスト審査委員のうち唯二人の慎重派である後藤政志委員と井野博満委員が呼ばれ、保安院による審査の問題点を指摘した。
後藤委員は「原子炉周辺建屋はほぼ壊れている」などとする見解を示した。建屋が倒壊し使用済み核燃料プールの水がなくなれば、核燃料が高温となって放射性物質が環境中に漏出する危険性を孕む。
井野委員は「制御棒の挿入性が検討対象から除外されたこと」などを問題視した。地震の強度や揺れ方によっては制御棒が原子炉に刺さらなくなる。チェルノブイリ事故のように制御不能となるのだ。
さらに井野委員は「市民、住民が審議に参加していない」ことに言及した。「被害を受ける人達の立場で見直されなくてはならない。御墨付きが出た後で『さあ、どうですか?』ではダメ」というのである。
至言だ。この国の原子力行政は上意下達そのものだった。電力会社と政府が原発の立地から安全対策に至るまで決めた後で、地元に降ろす。自治体と住民は金で黙らせる。金で黙らない原発反対住民には極左のレッテルを貼る。
危険性を指摘する「ウルサがた」を政策決定前から審議に参加させていたら、安全神話はなかったかもしれない。
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