もはや政党の体をなしていない。ましてや政権党であるから、この国の混迷は深い。いうまでもなく民主党のことである。民主党は16日、都内で2012年度の党大会を開いた。
連立を組む国民新党の亀井静香代表の挨拶はことのほか厳しかった―
「2年半前、この国が市場原理主義に流されようとしていることに対して戦った…(中略)…暴風雨のなかTPPの帆をあげて安全航海ができるとお思いですか?この日本を誰が救うんですか?オバマでも胡錦濤でもない。野田総理あなたしかおりません。民主党の皆さんしかおりません」。亀井代表は特有のダミ声を張り上げた。先生がだらしのない生徒を叱りつけるように聞こえて仕方がなかった。
社民党の福島瑞穂党首も「TPPと消費税増税に反対」と明言した。
経団連の米倉弘昌会長は趣を180度異にした。「TPPは日本の経済において必要不可欠です。総理からは『やらなければならないことは逃げずにブレずに取り組んでいく』という有難い言葉を頂戴した」。
TPPと増税をめぐっては、連立を組む国民新党ばかりでなく党内の半数の議員が反対している。こうした空気を察知して野田首相の演説はTPPのTの字も、消費税増税の消の字も言わなかった。ただ「税と社会保障の一体改革」という常套句でかわした。
党大会終了から1時間後、国会内で「新政研(新しい政策研究会)」の第1回目の総会と勉強会が開かれた。115人の議員(秘書含む)が出席した。新政研は小沢一郎元民主党代表が会長を務める党内最大の議員集団だ。1984年、竹下登氏(後に首相)が、自民党最大派閥の田中派を割って出た時の勉強会が「創政会」と呼ばれた。
新政研はTPPと消費税には旗色鮮明に反対を唱えている。財務省が目論む「消費税増税をあげて(国会で議決して)6月に(自民党と)話し合い解散」を何としてでも阻止する構えだ。
野田首相はなぜTPPと消費税増税にまっしぐらとなるのか?新政研の勉強会の講師に招かれた榊原英資・元大蔵省財務官は次のように分析する―
「関税率は平均で2%しかない。TPPで関税を取っ払っても貿易が増えるわけではない。景気が悪くなることが確実な時に消費税増税はすべきでない。野田総理は財務大臣だった時に勝君(勝栄二郎財務次官)に洗脳されたんじゃないか。ガハハハ」
選挙でノーを突きつけようにも国会で消費税増税を決められてしまった後では手遅れだ。財務省に入れ知恵され亡国への道をひた走る野田政権を阻止する妙手は唯ひとつ。新政研に体を張ってもらい、除名も覚悟で増税の政府案に反対票を投じてもらうことだ。