土曜午後の歩行者天国で賑わう銀座四丁目交差点。次期総理の呼び声も高い小泉進次郎を一目見ようと約5千人の聴衆が詰めかけた。
「わあ、進次郎だ、進次郎だ」。人々はこぞってスマホをかざした。映画ファンの田中には「(石原)裕次郎だ、裕次郎だ」と叫んでいるように聞こえて仕方がなかった。
政治家ではない。戦後を代表する銀幕のスターが街に降臨したような異次元の熱狂だ。父純一郎をはるかに凌ぐ人気である。
「自民党をぶっ壊す」と叫ぶ純一郎は、郵政を民営化すれば福祉から外交まで良くなるようなことを、テレビなどを通じて謳いあげ、総選挙(2005年)に大勝した。
マスコミ報道の効果が絶大だったことから「コミ選」と呼ばれた。
息子の進次郎は「自民党を変える」を政策の一丁目一番地とし、「選択的夫婦別姓の導入」などを掲げる。どちらも大いに国民受けする。個人的な人気とも相俟って、総選挙は勝つだろう。
恐いのは、この後だ。憲法改正を最優先の課題とする進次郎は、6日の記者会見でも中国の軍事的脅威を強調し、「自衛隊の憲法明記」を熱っぽく説いた。政策集の中には「緊急対応(緊急事態条項)」もしっかりある。
進次郎総理の下、憲法改正がなされれば―
まず考えられるのは台湾海峡に有事があった場合の対応だ。
進次郎総理は「日本の安全が脅かされる」などといった理屈をつけて躊躇なく自衛隊を出動させるだろう。
日本まで火の粉が飛んで来そうになったら、「日本を守るため」と称して敵基地先制攻撃だってある。
早くも週刊誌系のネットメディアは、進次郎を絶賛し始めた。
6日の記者会見でフリーランスの記者(田中)から知的レベルを問われ、進次郎は見事に切り返した。週刊誌系のネットメディアはそれを「神業」だの「神がかり」だのと絶賛するありさまだ。
進次郎に批判がましいワイドショーは見たことがない。
戦前戦中、「売らんかな」の新聞が戦争を煽った。
台湾海峡有事ともなれば、進次郎と戦争の相乗効果で新聞や雑誌はバカ売れするだろう。テレビは視聴率を稼ぎ、ネットメディアはページビュー数を飛躍的に伸ばす。第一次湾岸戦争(1991年)が格好の例だ。
メディアの圧倒的な人気を背にした進次郎総理が、「行けえ」と号令を発する姿が目に浮かぶ。戦後の歴代首相の中で最も危険な首相となる日が来ないことを祈るのみだ。
~終わり~
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