4月の第一週に首都キーウがロシア軍の手に墜ち、プーチン大統領は勝利宣言をしていた・・・今でもそう思う。
キーウに隣接し首都の防衛線であるイルピンは陥落寸前だったのだが、突如、ロシア軍は首都圏から引き揚げた。3月終盤のことである。
米軍からの情報もありウクライナ軍は、キーウ郊外の森にあったロシア軍の弾薬庫を発見、砲撃を加え壊滅させた。
弾薬の尽きたロシア軍の首都圏での戦闘継続は不可能になったのである。
欧米の武器供与と情報提供がなければ、いうまでもなくウクライナ軍は敗退していたであろう。
だからと言って、ウクライナ軍は欧米の代理として戦っているわけではない。
ウクライナの歴史と実情を知らない先生たちが「代理戦争」なる理屈をこねまわしプーチンを喜ばせている。
先生たちが唱えるように即時停戦したらどうなるか。ドンバス地方とクリミア半島はロシアに取られたままとなるのは必定だ。武力による併合を認めることになるのである。
ロシアがドンバスとクリミアに留まっているならまだしも、「ロシア系住民の権利が脅かされている」と称して、また侵攻してくるだろう。
「ロシアは約束を守らないから」。ウクライナの人々が口を開けば必ずこういう。
今回の戦争前、ロシアのラブロフ外相は「軍事侵攻しない」と公言していたのだ。それが舌の根の乾かぬうちにウクライナに大兵力を送り込み、虐殺と略奪と破壊を繰り広げた。
ブダペスト覚書(1994年)という大規模詐欺も記憶に新しい。
アメリカ、イギリス、ロシアの3か国で結ばれた覚書は「ウクライナが核を放棄すれば安全は保障しますよ」というものだった。
経済的事情もあってウクライナはすべての核を手放してしまった。ところが覚書から28年後、ロシアは国際社会の制止も聞かず、約束を破ってウクライナに攻め込んだのである。安全保障も何もあったものではない。
アメリカとイギリスは武器供与と情報提供で覚書を守っているのだが。
前回の現地取材(昨年末~5月末)で、田中は数えきれないほどの町や村を回り、ありとあらゆる人々に話を聞いた。
ほぼ10割の人々が「我々は自由のために戦う。ロシア軍がウクライナの地から完全に出ていくまでウクライナ軍は戦い抜くべきだ」と答えた。
3か月ぶりにウクライナの人々から話を聞いたが、一ミリもブレていなかった。
大規模虐殺のあったブチャでマスグレーブに花を手向ける夫婦がいた。話を聞いた。
田中「停戦できると思うか?」
夫セルギーさん「できない。プーチンはウクライナを完全に破壊するまで戦うよ」。
田中「停戦を迫る人々がいるが?」
妻イーラさん「ウクライナ国民=ゼレンスキーだ。国民が徹底抗戦を唱えている以上、彼らはゼレンスキーに停戦させることはできない」。
これがウクライナ国民の声だ。
俄か親露の先生たちは「停戦を阻んでいるのはゼレンスキーである」と信じ込んでいるようだが、ロシアのプロパガンダに乗らないことを願うのみだ。
~終わり~
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