ロシア軍侵攻前の1月に訪れた時、間近に見たザポリージャ原発が、ドニエプル川を挟んで彼方にあった。地元ニコポール市職員によれば、田中が立つ川岸から原発までは4.5㎞の距離である。
それでも国際社会を恐怖で揺さぶる6基の原子炉は、しっかりと視認できた。
ウクライナ軍によれば、ロシア軍は侵攻間もない3月4日から500人の兵力でザポリージャ原発の占拠を続けている。
武力で勝ち取った南部を死守し、北上を目指すロシア軍にとって原発は格好の人質となった(地図参照)。
ロシア軍にとって目の上のタンコブであるドニエプル川北岸は激しい砲撃にさらされるようになる。
ウクライナ軍は国土を守るために防戦しなければならない。
だからと言ってミサイル、ロケット、野戦砲で爆撃すれば、原発を誤爆する恐れがある。ウクライナ軍によれば、原発周辺のロシア軍基地にはドローンをはじめとする精密兵器のみで攻撃を加えている。
発電量6千メガワット、ヨーロッパ最大にしてウクライナ国内の5分の1の電力を賄うザポリージャ原発にダメージを与えれば、ウクライナにとって自殺行為となるからだ。
対岸のニコポール市は、ザポリージャ原発から10キロ圏内である。福島原発に喩えたら双葉町や大熊町だ。
そこにロシア軍の砲弾が降り注ぐのである。田中が訪れた19日も未明に砲撃があり、アパート3棟以上が被害に遭い1人が死亡した。砲弾はザポリージャ原発近くのロシア軍基地から放たれたものと見られている。
ニコポール市のアレクサンダー市長によれば、ロシア軍の砲撃は5週間前から激しくなり、住民の50%から55%が市外や国外に脱出した。(侵攻前の人口は11万6千人)
~終わり~
◇
読者の皆様。ロシア軍が基地化し、IAEAが懸念を強めるザポリージャ原発。
世界を震撼させる事態となった場合、いち早く現実を伝えるため田中はザポリージャに滞在しています。
通訳やドライバーの人件費も含めて多額な経費となっております。ご支援何とぞ宜しくお願い申し上げます。↓