垂れ下がった電線。ひとっこ一人いない道路。人の匂いがしないのは最前線ならではだ。
戦略要衝のザポリージャを狙うロシア軍の攻撃にさらされる南東部の町オリヒフ。18日から足掛け4日の外出禁止令が敷かれた。
地上には人の匂いがしなかったが、地下には人の匂いがあった。田中がアパートのシェルターを訪れると、住民8人が息を潜めるようにしていた。
ロシアの侵攻が始まるとすぐに避難してきた。シェルター暮らしは6ケ月に及ぶ。ただし外出禁止令が出ていない時などは、地上の自室で過ごすことが多い。
最年少のダーシャさん(20代)に「ロシア軍が来たら怖いですか?」と聞くと、間髪を入れず「怖い」と答えた。理由はあえて尋ねなかった。
年長組のオルガさん(70~80代)は「ここ4日間は水も電気もない」と叫ぶように言って、戦争を呪った。
オルガさんはロシア生まれだ。プーチンがウクライナ侵攻の口実とする「ネオナチからの解放」を、こちらが聞きもしないのに話し始めた―
「私はネオナチなんて見たことがない。ロシア軍こそ怖い。プーチンは何を欲しているのか分からない」。
「すべての国々は武器を下さい。日本は武器を下さい。我々の国土を守るために、ロシアの侵攻を止めるために」。オルガさんは身振り手振りを交え、口角泡を飛ばしながら訴えた。
「私たちのBoys(軍隊)はいい仕事をしている」と言って食料を届けに来た兵士に頬ずりするのだった。
「武器供与は戦争を拡大させるだけ」と唱える先生たちがいるが、ウクライナの市民をロシア軍の殺戮と暴力から守っているのは、兵器と軍隊なのである。
~終わり~
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読者の皆様。
ロシア軍が人質にとっているザポリージャ原発が、世界を震撼させる事態となった場合、いち早く現実を伝える必要があります。
万が一を考え田中はザポリージャに滞在しています。
通訳やドライバーの人件費も含めて多額な経費となっております。ご支援何とぞ宜しくお願い申し上げます。
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