安倍政権とマスコミが窮地に追い込んだ生活保護 勝訴判決は転機となるか

入廷する原告団。メディアは『田中龍作ジャーナル』だけだった。生活保護バッシングに血道をあげたマスコミは一社も来なかった。=2016年5月、東京地裁前 撮影:田中龍作=

 これでは生活保護利用者が浮かばれない—
 
 2013~2015年にかけて実施された生活保護基準額の減額に対する違憲訴訟で、大阪地裁は22日、受給者の訴えを認め、減額は違法とする判決を下した。

 きょう(23日)、全国紙の朝刊はいずれも大きく報道している。(朝日、毎日の東京版は一面)

 東京でも同じ趣旨の訴訟が起きている。2016年5月に第1回口頭弁論があった。当日、我が目を疑う光景が目の前に広がった。

 裁判の皮切りの象徴ともいえる原告団の入廷に、マスコミは1社たりとも来ていないのだ。

 集団訴訟の提訴はたいがい、新聞テレビ各社のカメラマンたちが来て、東京地裁の正門前はごった返す。

 ところがこの日、来ていたのは『田中龍作ジャーナル』だけだった。

 裁判に至るまでの経緯を振り返ると妙に納得が行く。自民党は2012年末の総選挙で政権に返り咲くにあたって「生活保護の1割削減」を公約に掲げていた。

 安倍政権が最初の仕事に掲げたのが、この「生活保護削減」だったのだ。

 お笑い芸人を血祭りにあげたマスコミの生活保護バッシングは、自民党の福祉切り捨て政策と見事なまでに連動した。

 マスコミが安倍政権に忖度して原告団の入廷を取材報道しなかった・・・と疑われても不自然ではなかった。

70代で一人暮らしの女性は「生活扶助費の減額分」を弁護士に相談していた。全国でこうした動きがあり裁判につながった。=2013年8月、司法書士会館 撮影:田中龍作=

 マスコミ報道は裁判に少なからず影響を及ぼす。駆け出しの頃、回っていた裁判所のある判事は、朝日新聞を2部とっていた。1部は手に取って読み、もう1部はスクラップ用だ。

 最高裁事務局の広報担当者(後に最高裁長官)が記者クラブに来て、賭け麻雀に興じていたこともあった。

 新聞テレビと裁判所は同衾の間柄と見てよい。

 一方で報道の監視がまともにあると、裁判官はいい加減な判決を書けなくなる。

 生活保護費引き下げの取り消しを求める裁判は全国で30件起きており、このうち名古屋地裁の1件は敗訴している。

 マスコミが生活保護訴訟を提訴の時から大きく報じていれば、裁判の行方は違ったものになっただろう。

 生活保護をさらに受けにくい世の中にしたのは、マスコミと安倍政権だ。

    ~終わり~
  
      ◇
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