今年のブラック企業大賞・特別賞に新国立競技場の建設を請け負っている大成建設と三信建設工業が選ばれた。受賞理由は若き現場監督の過労自殺だ。
新人の現場監督で前月の残業時間が200時間を超えていたとされる。新国立競技場は設計のやり直しで着工が予定より一年遅れた。2020年の東京五輪開催に間に合わせるため現場は強行軍を強いられていたのである。
安倍政権が来年の国会で成立を目論む「働き方改革」には、「高度プロフェッショナル制度の導入(残業代ゼロ)」や「裁量労働制の拡大」などの猛毒が含まれている。
裁量労働制とは、労使間で残業時間を「みなし」で決め、実際の残業時間が多かろうが少なかろうが、労働者は一定の残業代を得る仕組みだ。
「定額働かせ放題」ともいわれ、経営者に好まれる制度だ。NHK記者・佐戸未和さんの過労死は裁量労働制が招いた。
「働き方改革法案(仮称)」が国会に出されれば通るのは必至だ。過労死が飛躍的に増えることは、想像に難くない。
「(安倍政権が掲げる)一億総活躍とは一億総過労死」。新聞記者時代から労働問題に取り組んできた竹信三恵子さん(和光大学教授)は、こう指摘する。
マスコミが創り出すオリンピックという美名の下、一億総過労死となっても不思議ではない。
この国の体制は「一億総火の玉」を強いた歴史を持つ。そして今は戦前回帰を理想に掲げる首相を頂くのだから。
2020年の東京オリンピックでは大量のボランティアが動員されるようだ。「タダボラ」である。
開催が8月であるため熱中症による死者続出も十分予想される。だが労災とはならない。労働ではなくボランティアだからだ。
高橋まつりさんの過労自殺に懲りた電通は、巧みな抜け道を考えついた。電通は2016年のブラック企業大賞・受賞社である。
〜終わり~