幹事社から問い詰められた畠山氏はPCに書き込んできたメモを読みながら慎重に答えた。「総務省の記者会見がインターネット配信を通じて国民すべてに開かれているというのであれば、私は動画配信をしない」。苦しそうに語る口調が畠山氏の決意のほどをうかがわせた。
畠山氏は返す刀で「フリーによる動画撮影とネット中継を認めないのは不合理である」と片山大臣に食い下がった。大臣に言葉を発しながら、実は記者クラブに抗議しているのだ。
片山大臣は「記者クラブは映像の2次利用を心配しているようですね」と話した。クラブが吹き込んだのだろうが、筆者は大臣にその心配はないことを説明した。「一昨年9月から外務省でニコニコ動画とビデオニュース・ドットコムがネット配信しているが、2次利用のトラブルは一切ない」と。
筆者はネットの次のような利点を説明した。▼一部始終を視聴することができる。▼視聴者の数はテレビより勝るとも劣らない。そのうえで「ネットを配信させないというのは国民の知る権利に逆行することにならないか」と迫った。
記者クラブによる規制は理不尽であることは明らかだった。それでも威厳を保ちたいのが記者クラブだ。幹事社が言い放った。「記者会見はクラブ主催である以上・・・」。
正当性のない権威をカサにゴリ押しする態度だった。筆者は怒りで理性を失った。もともと理性的なタチではないが。
「あなたたちはジャーナリストでありながらジャーナリストの知る権利を奪って恥ずかしいと思わないのか?」と怒鳴ったのである。
片山総務相の記者会見が終わると幹事社が「フリーの皆さん、残って下さい」と高らかに告げた。言葉使いは一応丁寧だが、高校の番長が「オウ、お前ら残っとけよ~」と凄んでいるようでもあった。
幹事社はネット中継という掟破りをしでかした畠山氏への尋問を本格化させた。「生中継をやったことを告白したのは何故?」
「大臣の見解を聞きたかったからです」と畠山氏。きちんと揃えた両膝の上に手を乗せ背中を丸めていた。白砂でお裁きを受ける罪人を思わせた。「現行犯ですから」と後でおどける畠山氏が気の毒だった。
フリー記者の寺澤有氏は幹事社による尋問のもようをビデオ撮影していた。闇に葬られないようにするための可視化である。
思い余った寺澤氏が幹事社に聞いた―
「出入り禁止になるんですかね?」
「クラブで話し合ってみないとわかりません」
「お沙汰はいつ出るんですか?」
「わかりません」
現時点(6日22時)でお沙汰はまだ言い渡されていない。不安を抱えながら畠山氏や筆者は明日(7日)の総務相記者会見に出席する・・・
(つづく)
※畠山氏がお手打ち覚悟で撮影・配信したUst中継は下記URLで