野党指導者にノーベル平和賞 日本がベネズエラとならないために

人々は飢えてゴミ箱を漁る。労働者の国なのに変だ。=2019年、カラカス 撮影:田中龍作=

2025年のノーベル平和賞は、ベネズエラの野党指導者マリア・マチャド元国会議員(58歳)が受賞することになった。

他の野党指導者は身の危険を感じて外国に亡命しているが、マドゥーロ独裁政権がマリアさんを拘束したりすれば、国際社会は大騒ぎとなる。

暗愚で鳴るマドゥーロ大統領も簡単に手を出せまい。ただし事故死に見せかけた暗殺はある。

安倍政権の頃、田中はベネズエラ現地取材を敢行した。アホな独裁者が国家を運営する惨劇をこの目で見届けるためだ。2019年のことである。

ポリタンクを手に山肌に張り付いている人々がいた。山の湧き水を汲んでいるのである。資金不足とエンジニアの国外脱出で水道が維持できなくなっていたのだ。

山から染み出てくる水をボトルに詰める市民。ゴミ漁りと同じく当たり前の光景となっている。=2019年、カラカス郊外 撮影:田中龍作=

病院に行っても水は出ない。重症患者がいても手術はできないのである。水がないためメスなどの医療器具を洗えないからだ。HIV感染も目を覆うばかりだった。

当時、ベネズエラのHIV感染者は保健省に登録しているだけで約7万人。登録外は約20万人に上る(NGO:Acción Solidariaまとめ)。

 政府に はびこる 汚職が、わずかながらのHIV対策費を食い物にしていた。HIV検査やコンドームを普及させるはずの資金を、政治家や役人がポケットに入れたのである。

インターネットは恐ろしいほど遅かった。ビジネスが遅滞するのは目に見えている。

凄まじいまでのインフレだった。大卒の月給でチーズが買えないのだ。

田中が取材に赴いた2019年には、人口の10%にあたる300万人が国外に脱出していた。それから6年が経ち、今年5月現在の国外脱出者は790万人(UNHCRまとめ)にのぼる。人口の4人に1人が国外に逃れたのである。

自然減である日本のケースと同列に論じることはできないが、凄まじいばかりの人口減少は同様だ。


土のうと軍隊に守られた大統領公邸。どこが民主主義国家なのか?=2019年、カラカス 撮影:田中龍作=

ハイパーではないが人々がインフレに苛まれる姿は、いまの日本と同じだった。すこぶる頭の悪い独裁者が国をガタガタに破壊したところは酷似である。

辛うじて相違するのは、日本はまだジャーナリストを拘束していないことだ。田中が現地にいた時、米国のTV取材クルーが立て続けに拘束された。

計2件だが、うち1件はホテルを出るとすぐに治安警察につかまった。社会主義国でタブーとされる飢えた市民のゴミ箱漁りを取材していたからだ。

田中もゴミ箱漁りを取材したが、スモークを施した取材車からの隠し撮りだった。とはいえ、次は俺かと思うと不安だった。田中の国外脱出から3日も経たぬうちに、飛行機は飛ばなくなった。空港の停電だった。

日本はかろうじて暗黒の独裁国家となることを免れている。裏金議員を要職に起用し、法治に挑戦する高市総裁が最高権力を握れば、この国は早晩ベネズエラ化する。

 ~終わり~

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