『火垂るの墓』(野坂昭如著)を読むまでもなく、戦争は夥しい数のストリートチルドレンを産む。
バアム少年(11歳)は、生まれる前からイスラエルに翻弄されていた。父と母は2013年、イスラエルの爆撃によりシリアを追われた。辿り着いたのはレバノンのダヒアだった。ヒズボラの最重要拠点である。バアム少年はここで生まれた。
ダヒアは毎日のように空爆にさらされる。一家は爆撃に遭い、バアム少年は両親と生き別れになった。北隣のベイルートに漂着したのが14日前だった。
「どうやって食べてるの?」田中は聞いた。
「誰かがたまに食べ物をくれる。それ以外はゴミ箱漁りだ」。少年は力なく答えた。
イスラエルの爆撃を逃れベイルートに避難してきた人々は100万人を超す。多くはレバノン南部からだが、一方で「ダヒアから」と答える避難民が目立つ。
ブルーモスク横の駐車場には避難民のテントが10張ほど並ぶ。排泄物のすえた臭いが鼻をつく。
ある家族に「どこから来たのですか?」と聞くと「ダヒア」という答えが返ってきた。
「イスラエルをどう思うか?」母親と見られる女性に尋ねた。
「地中海に追い落としたいよ」。彼女は中東の女性が怒りを表す時の特有の両手をかざす仕草で答えるのだった。
~終わり~
【読者の皆様】
大借金をしてレバノンまで来ております。
アラブの民を虫けらのように殺し、国連軍まで攻撃するイスラエルの狂気を見届けたいのですが、滞在資金が底を突きかけています。